「軽石」関東へ〝本隊〟到着か 自治体、対策に本腰

沖縄県本部町の新里漁港に漂着し、層になって浮かぶ軽石。日光が遮られ水面下は真っ暗だった=15日午前
沖縄県本部町の新里漁港に漂着し、層になって浮かぶ軽石。日光が遮られ水面下は真っ暗だった=15日午前

小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で発生したとみられる軽石が沖縄県などに漂着し漁業や一般生活に被害が出ている問題で、今月末にも到達が予測される関東地方でも、警戒が強まっている。すでに伊豆諸島の式根島(東京都新島村)や神津島(神津島村)でも少量の軽石の漂着や沖合での漂流が確認された。専門家は「『本隊』が今後、到達する可能性がある」と指摘。自治体側は対策チームを立ち上げ、フェンスなど資機材の用意も進めるが、実効性を疑問視する声もある。(中村翔樹、川瀬弘至)

手探りの対応

「そちらが抱えているいけすの数や、大きさを教えてください」。今月初め、千葉県内で唯一、いけすによる養殖漁業を手掛ける「鋸南(きょなん)町勝山漁業協同組合」(鋸南町)に、県の水産課から連絡が入った。

東京湾に面する内房エリアの同組合では、港から数百メートル沖合に縦横深さがいずれも8メートルほどのいけす約25基を浮かべ、数万匹の真鯛やアジを養殖している。

県側は軽石の到達に備え、海に漏れた油などの拡大を抑える「オイルフェンス」と呼ばれる帯状の機材を一帯に設置することを検討しており、同組合用に必要な数量を把握するための聞き取りだった。

県は「軽石対策チーム」として情報共有会議を発足させ、10月28日に初会合。海上保安庁など専門機関から提供される軽石の観測データや、各地の漁協からの情報を集約している。

沖縄県では、いけすに軽石が流れ込み、エサと間違えて飲み込んだ魚が死ぬなどの被害が出た。同組合は、目がより細かい網カバーを購入し、いけすを覆うことも視野に入れる。「前例がなく、全て手探りだ。情報収集を進め、適宜対応していくしかない」(組合関係者)と身構える。

到達回避も?

海洋研究開発機構は、黒潮の流れに乗って今月末ごろ、神奈川県や千葉県の沖合に軽石が到達すると予測。本州では伊豆半島(静岡県)周辺が最接近ラインと予想される。

同機構の美山透主任研究員は、これまでの移動速度から、式根島での確認分は〝先着隊〟の可能性があると分析。「(10月末に)高知沖の広範囲で確認された大量の軽石は、太平洋を南下するなどしている段階だろう。今後、これらが北上してくる」との見方を示す。

ただ、同機構のシミュレーションは風向きを考慮していない。そのため、実際には本州への漂着は回避できるとの見方もある。

東海大の山田吉彦教授(海洋政策)は「これから冬にかけて北西からの季節風が強くなるため、軽石の多くは太平洋側に流れ、日本列島から離れていくのではないか」と分析する。

24時間連絡網

情報収集する自治体側からは、資機材の有用性という別の懸念も聞かれる。

軽石は波でこすれて小さくなり、やがて海底に沈むが、現状は海面から一定程度の厚みの層を形成しているとみられる。そのため、オイルフェンスを沖合に設置しても、下層を漂う石の流入は防ぎきれない可能性がある。強風で海がシケていれば、単純にフェンスを乗り越えてくるという。

沖縄県や鹿児島県での被害は深刻だ。国土交通省などによると、両県の100カ所以上の漁港や港湾で軽石が確認された。

沖縄県のまとめでは、今月10日時点で県内の漁船105隻がエンジントラブルを起こし、全体の半数以上の1570隻が出漁を自粛している。マリンレジャーのキャンセルも相次ぎ、観光面にも影を落とす。

静岡県は10月中に、港がある自治体などと24時間態勢で連絡が取れる軽石専用の連絡網を作成した。港湾企画課の北川裕人課長は「何か異変があればすぐに情報共有できる状態だ。早め早めの対応で、被害防止に努めたい」と話した。