【北京=三塚聖平】中国で4カ所目の証券取引所となる「北京証券取引所」が15日、株式の取引を始めた。習近平国家主席の主導で開設したもので、革新的な中小企業の資金調達支援を目標に掲げる。米国との金融、科学技術に関する対立の長期化を念頭に置き、海外に頼らなくて済むようなベンチャー企業の資金調達や育成を進める中長期的な思惑もうかがわれる。
中国の証券取引所は、本土の上海、広東省深圳(しんせん)に加え、香港にもある。習氏は9月上旬に北京証取の設立方針を表明。2カ月余りでのスピード開設だ。中国メディアによると、15日の記念式典には、習氏の側近である北京市トップの蔡奇・党委書記らが出席した。
北京証取は、中国人民銀行(中央銀行)本店などがある北京中心部の「金融街」と呼ばれる地域に置かれた。従来の中小企業向け店頭市場「新三板」を母体に創設。当初は新三板の最上位クラスから移った71銘柄に加え、新規上場の10銘柄となった。北京にはIT・ハイテク企業が集まり「北京のシリコンバレー」と呼ばれる中関村(ちゅうかんそん)もあり、そうしたベンチャー企業の資金調達を支える。
中国国内の証券市場を拡充する狙いも指摘される。中国のIT企業は従来、米市場で上場して成長に必要な資金調達を行ってきたが、米中対立を背景に米当局が中国企業の上場に歯止めをかける措置を打ち出している。最近では、米市場に上場する中国ハイテク企業の香港証取での重複上場が相次ぐほか、中国版ナスダックと呼ばれる上海証取の新興企業向け株式市場「科創板(かそうばん)」を上場先に選ぶベンチャー企業も出ている。中国企業の資金調達手段を国内で多様化させるとみられる。
ただ、昨年11月には中国インターネット通販最大手のアリババ集団傘下で電子決済サービス「アリペイ」を運営するアント・グループが、当局の指導を受けて香港証取と科創板で予定していた株式上場を突如延期。習政権は国内IT企業への統制強化を進行中であり、北京証取の将来性に影を落とす可能性もある。