マッサージには、なぜ筋肉の治癒効果があるのか そのメカニズムが明らかに

通常、アメーバのように盛んに動き回る好中球はサイトカインのシグナルに引き寄せられて、損傷部にある細菌・真菌などの病原体や異物を貪食して排除する。そこで研究チームはもう一歩踏み出し、好中球やサイトカインが再生中の筋線維にどう影響するのかを調べた。

「好中球は、病原体や損傷した組織を殺して除去することで知られていますが、今回の研究では、好中球が筋前駆細胞のふるまいに直接影響することがわかりました」と、今回の論文の共同執筆者であるステファニー・マクナマラは説明する。「治癒の初期段階での再生には炎症反応が重要です。しかし、フル機能で再生のプロセスを経るためには、炎症を速やかに解消することもまた同じほど重要なのです」

好中球が実際に筋肉の再生に重要なのかを調べるために、研究者らはマッサージをせずに好中球を除去する抗体を注入してみた。すると、マッサージなしでも損傷した筋肉の再生が同じように早まることが確認されたのだ。

つまり、好中球が分泌する因子は筋肉損傷の初期段階では筋細胞の成長を促すが、その因子が長期にわたって存在すると新しい筋線維への分化と成長を阻害するのである。用済みとなった好中球を素早く除去することが、回復を早める鍵だったのだ。

また研究者らは筋肉損傷から2週間後、マッサージを受けたマウスと受けなかったマウスで、再生した筋線維の種類が異なることに着目した。すると、マッサージを受けたほうの筋肉線維はより大きな筋線維を伴った強い筋線維へと再生していたという。これが筋肉の強化につながっていたのである。

好中球の除去に最適な時間は3日目

研究者らは好中球を枯渇させる抗体を使う実験をした結果、最速の筋肉再生には炎症因子である好中球を3日目に除去することが最適だと結論づけている。3日目に好中球を除去したマウスの筋肉は、何もしなかった筋肉と比べて繊維径が大きくなり、すでに筋力の回復も見られたという。

「今回の研究では、機械的な刺激と免疫機能の間に非常に明確な関係があることがわかりました。これは、骨や腱、毛髪、皮膚など、さまざまな組織の再生にも期待をもたせる結果です。また、薬物による介入ができない病気の患者にも利用できるでしょう」と、ソは語る。

今回の研究では、炎症を起こす因子をマッサージで除去することが筋肉の再生に必要であることがわかった。また、薬を使わずに外部からの刺激が免疫機能に影響を与えられるという点で重要な発見だ。今回はマウスでの実験だったが、研究チームは今後は人間でこの手法を試す予定だという。