書評

『ヒトラー虚像の独裁者』芝健介著

『ヒトラー 虚像の独裁者』
『ヒトラー 虚像の独裁者』

ナチスドイツの独裁者ヒトラー(1889~1945年)。死後75年を過ぎてもなお関連本が相次ぐ中で、経済再建の功績などはるか昔に否定された「ヒトラー神話」が再生産されている例も少なくない。日本におけるナチスドイツ研究の第一人者が、今世紀以降の研究成果を踏まえてその実像を描く。

戦後の研究では、ヒトラー個人を重視する「意図派」と、ナチス体制全体の構造に重きを置く「機能派」の対立が続いてきた。両者を統合した英歴史家カーショーのヒトラー伝を著者は高く評価し、過去数十年の研究史の整理にも紙幅を割く。今後の研究の基準となる評伝だ。(岩波新書・1276円)