聞きたい。

執行草舟さん 『成功に価値は無い!』(ビジネス社・1540円)人間が人間たるゆえんは

執行草舟さん
執行草舟さん

異形の思想家である。武士道(葉隠)の精神とキリスト教を核にした西洋思想を止揚した独自の思想から、人間と人間社会の在り方を厳しく問い続ける。本書は若いビジネスパーソンを念頭に、Q&A方式で自身の思想を平易に述べたものだ。

タイトルが示すように、常識を覆すメッセージが満載されている。読めば分かるが、けっしてこけおどしではない。核になる思想は次の言葉に凝縮されている。

《何をおいても命が一番大切だというのなら、それは動物です。そうではなく、わが命よりも、わが肉体よりも大切なものがあるから、人間なのです》

この言葉は現代においては、「時代錯誤」「滅私奉公の思想」といった感じ方をする人も多いはずだ。

「命を軽んじろと言っているわけではありません。命に代えても守りたいものが自分にはあるのか、と問い続けることが人間の人間たるゆえんだと考えます」

執行さんはフランスの哲学者、アランの《魂とは、肉体を拒絶する何ものかである》や、スペインの哲学者、ウナムーノの《人間以上のものたらんと欲するときにだけ、人間は本来的な人間になる》という言葉を紹介しながら、その真意を読者に伝えようとする。

執行さんは現代の日本人の多くが動物、それも飼い慣らされた家畜になっていると考える。

「欲望のみに従った生き方は、欲望の堂々巡り、無間地獄に陥るだけです。戦後日本で当たり前とされてきた物質至上主義という常識が覆されない限り、私たちに未来はありません」と言い切る。

平易な叙述ながら、そこには祈りにも似たメッセージが込められている。

本書で興味を持った読者に、次の一冊として勧めたいものを問うと、『超葉隠論』(実業之日本社)との答えが返ってきた。

(桑原聡)

【プロフィル】執行草舟

しぎょう・そうしゅう 昭和25年、東京都生まれ。立教大法学部卒。実業家、著述家、歌人。独自の生命論に基づく生き方を提唱する。『生くる』『友よ』『根源へ』『脱人間論』など著書多数。