海遊館diary

魚のお掃除屋さん 食べられない真相

大きな魚の目の周辺を掃除するホンソメワケベラ(海遊館提供)
大きな魚の目の周辺を掃除するホンソメワケベラ(海遊館提供)

勤労感謝の日(23日)が近いのにちなみ「はたらきもの」の魚、ホンソメワケベラを紹介します。

ホンソメワケベラは、他の魚の体表についた寄生虫や口内の餌のかすなどを、細く鋭った口でついばんで食べます。この行動から「魚の掃除屋」と呼ばれています。英名でも「クリーナーフィッシュ」。海遊館内の「太平洋」水槽でもクエやヤイトハタなどの大型魚を掃除している姿をよく見かけます。

ホンソメワケベラを観察すると、胸ビレを羽ばたかせ全身を曲げるようにして泳ぎ、スルスルと他の魚に寄っていって警戒されることなく近づきます。どうやらこの泳ぎ方がポイントのようです。

もし、私たち飼育員が魚の掃除をしようとするならば、まずは魚に警戒されずに近づくことから始め、飼育員に慣れてもらう必要があります。これにはとても長い時間を要します。

仮に警戒されずに近づくことができたとしても、魚についている寄生虫などはとても小さく、人間の目には見えないことが多いので、ホンソメワケベラよりも上手に魚を掃除するのは難しいと思われます。

最大14センチほどにしかならない魚ですが、大型魚に臆することなくエラの内側や口の中にも入っていきます。そんなシーンを見ると「食べられてしまう」と心配に思うかもしれません。

しかし、大型魚はホンソメワケベラが自分たちの体を掃除してくれるありがたさをわかっているのか、ホンソメワケベラを食べようとしている姿を見たことがありません。

むしろ、大きな口を開けて掃除を催促しています。時にはクエのすぐ後ろにクエ、その後ろにヤイトハタというように、掃除の順番待ちをしていることさえあります。

ホンソメワケベラからすれば、他の魚のためではなく、自身の食糧確保と生き残りのために身につけた知恵なのでしょうが、魚の体をきれいに保つという私たち飼育員には難しい技をこなす「はたらきもの」に日々感謝しています。(魚類担当飼育員 長尾翔平)