産経抄

11月14日

「家出」の前後を入れ替えると「出家」になる。静かな人生にはどちらも出る幕のない言葉だろう。「それを二つとも選んでしまったという私の人生が、平穏順調である筈(はず)がない」。99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんは、随筆にそうつづっていた。

▼「小説家になります」と言い残し、夫と3歳の娘を置いて家を出た。当時25歳。やがて作家として名を成し、道ならぬ恋に何度も落ち、誰かを愛しては傷つけた。「所詮人間の愛は、相手を幸福にしない」とむなしさを覚え、仏門にすがり得度したのが51歳だった。

▼多情多感な女性の愛欲を描いたデビュー直後の作品に、文壇は「情痴作家」の判を押し、瀬戸内さんはぶれぬ信念を持つことで悪評に報いた。「切っても血もにじまないような知的小説を書く作家といわれるより、私は一生、情痴作家と呼ばれても悔いはない」と。

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