次世代のブレイン・コンピューター・インターフェイスになるか 脳に埋め込む微細なチップが秘めた可能性

いかにマイクロチップを脳に入れるのか

だが、小さいほうがいいからといって、絶対に安全で確実なものになるわけではないとゾルツバッハは警告する。極小のインプラントでも免疫反応を引き起こしかねないので、ニューログレインも生体適合性のある材料でつくる必要があるのだ。

脳インプラントの開発における大きな課題は、脳の損傷を最小限にしながら長もちするインプラントをつくり、置換手術の危険を避けることにある。現状のシステムは約6年もつとされているが、寿命の多くは瘢痕組織が原因で、かなり早いうちに機能が停止する。

ニューログレインがこの課題の解決策になるとしても、いかにマイクロチップを脳に入れるのかという問題がある。ブラウン大学の研究チームによるラットの実験では頭蓋骨の大部分を切除したが、こうした措置は人間が対象なら明らかに理想的とは言えない。

現在の埋め込み型のシステムでは患者の頭に穴を開けなければならないが、ブラウン大学のチームは脳全体への侵襲的な手術は避けたいと考えている。そこで特別なデバイスを使い、ニューログレインを細い針で頭蓋骨の内部に入れる方法を開発しているという。

なお、イーロン・マスクが立ち上げた神経科学分野のスタートアップのニューラリンク(Neuralink)では、コイン型の脳インプラントを挿入するために、ブラウン大学の手法と似たミシンのようなロボットの開発を目指している。

さらなる小型化という課題

マイクロチップの安全性と寿命については、意識があって自由に動けるラットで実験する必要がある。ブラウン大学のチームも次はこの実験を計画しており、ラットのあとはサルで研究する予定だ。神経工学者のヌルミッコによると、ラットに施しているニューログレインのシステムの数は、人間の脳の表面を覆う場合は最終的に770セットまで増えるという。

これらのマイクロチップによって神経の活動に関する多くのデータが集約されたとしても、あらゆる信号の解読はかなり困難な挑戦と言っていい。ブラウン大学のチームは、数千のニューロンの活動を記録するところから始めて、いずれは数十万を対象にしたいと考えている。

それを実現するためには、こうした脳の信号をすべて解読してコマンドに変換し、そのコマンドをユーザーの望む動作を実行する外付けデバイスに送らなければならない。つまり、現在の単純なシステムから得られる神経の情報よりも、はるかに高度なデータの解析が必要になる。

これと並行してヌルミッコの研究チームは、ニューログレインをさらに小型化し、脳に数百個を埋め込んでも脳の損傷が最小限で済むようにしたいと考えている。ヌルミッコによると、それはマイクロエレクトロニクス(超微細化技術)の問題なのだという。

「ニューログレインの小型化は、必ずしも思い通りにいかないこともあります」と、ヌルミッコは言う。「そうなれば、取り組みを繰り返さなければなりません。長い道のりにおける血と汗と涙という、努力の繰り返しなのです」