木星の“眼”のような大赤斑、その驚きの「深さ」が観測から明らかに

予想していなかった発見

木星の大気の活動を、天文学者は地球の天気と比べることが多い。その場合、大赤斑は史上最大のハリケーンやサイクロンにたとえることができる(厳密はこの巨大な嵐は反時計回りに回転しているので、科学者らはこれをアンチサイクロンと呼ぶ)。

しかし、地球の天候は下に海や陸地が介在していてサイクロンが壊れることもあるが、木星は下のほうまでガスで覆われている。地球上では「サイクロンが永遠に続くとは思えません」と、パリージは言う。大赤斑は何世紀も続いていると、天文学者らは考えている。

木星の気象層がどうなっているのか科学者たちにはよくわからなかったが、水分が凝縮できて太陽光が透過できる層である大気の最上部に限られるだろうと考える人もいた。ところが、実際にはそうではなかった。

「大赤斑が何であれ、水の雲が形成されるはずの場所よりも深部まで広がっています。わたしにとっては、これがジュノー・ミッション最大の驚きであり、最も予想していなかったことでした」と、パサデナにあるカリフォルニア工科大学の惑星科学者で、今回の研究には参加しなかったデビッド・スティーヴンソンは語る。

木星の大気に対する見方を一変

この発見はジュノーに搭載されているもうひとつの機器、マイクロ波放射計によってもたらされた。ほかの探査機の写真からでも地表の様子を垣間見ることはできるが、6つの波長の異なるマイクロ波を測定することで表面を突き抜け、その下のさまざまな深さにある雲の層のスナップショットを撮影できる。タマネギの皮を上から6枚むくようなものだ。

ボルトンは、この機器を電子レンジにたとえる。食品に含まれる水分子がマイクロ波を吸収することで、電子レンジは水分を利用して加熱しているからだ。

木星は複数の波長のマイクロ波を放射しており、その一部は大気中の水とアンモニアに吸収される。しかし、大気圏の外へ出て探査機に検出されるものもある。科学者らが調べることのできる最も長い波長では、現時点で到達できる水とアンモニアの最も深い層の一部を感知しており、そこにも大赤斑の証拠を認めることができた。

つまり、上のほうに比べれば密度も温度も低くなっているものの、最も深い層でもサイクロンの形を見ることができるのだ。この巨大な嵐には明らかに深い根があり、木星の内部と大気に何らかのつながりがあることがうかがえる。

「このデータは巨大惑星の大気に対するわたしたちの見方を一変させるでしょう」と、ボルトンは言う。木星の複雑な大気の循環と力学を研究している理論物理学者らは、木星の嵐がどのようにして形成されるのか解明に苦労するだろう。木星の嵐は地球上の最も極端な気象ともあまりにも異なっているからだ。

「科学者としては謙虚な気持ちになりますが、予想外の新しい発見に携われることは喜びと言っていいでしょう。楽しみのひとつですし、そのために調べているのです」と、ボルトンは言う。