新生銀行に対するSBIホールディングスのTOB(株式公開買い付け)をめぐり、両社は12日、新生銀の大株主である預金保険機構の質問状に対し、いずれも令和7年3月期の最終利益を700億円台に引き上げる計画を示した。SBIは25日予定の臨時株主総会で買収防衛策発動が可決されればTOBを撤回すると表明。機関投資家に影響力がある大手議決権行使助言会社は防衛策への賛成を推奨しており、同機構などを通じ2割の議決権を握る政府の動向に注目が集まる。
新生銀は同機構から会社の価値を高め、株価を引き上げるための経営方針を問われていた。12日の回答では他社との提携や企業買収などを通じ7年3月期の最終利益を702億円(3年3月期451億円)に引き上げると表明。一方、SBIと連携した場合の増益効果は「数億円程度にとどまる」との見通しを示した。
SBIは自社の提携先の地域金融機関との協業などで、法人業務を中心に新生銀に新たな収益機会が生じると強調。新生銀の7年3月期の最終利益が710億円に拡大するとした。
一方、買収防衛策に賛成を推奨する米国の議決権行使助言会社2社は、TOB後の株式保有比率を最大48%とするSBIの設定で、残る株主に不利益が生じると懸念する。SBIからTOB成立後の具体的経営方針が示されておらず、「株主に不安を与えている」とも指摘する。助言会社は合計で5割程度の議決権がある機関投資家に一定の影響力があり、当初は有利とみられたSBIへの風向きが変わりかねない状況だ。
SBIは12日、TOBが成立すれば、「一般株主の利益に十分配慮した形」で過半数の株式を取得することを検討する考えを示し、他の株主への配慮を鮮明にした。その一方で、買収防衛策発動が可決してTOBを撤回する際には保有している2割の株の完全売却も検討する意向を示した。
こうした状況下で、防衛策が過半の賛成を得て発動されるかは、預金保険機構と整理回収機構の保有株を合わせ2割の議決権を持つ政府の判断が焦点だ。臨時株主総会に向け政府が何らかの意思表示をした場合、態度を決めかねている株主の判断にも影響を与えかねない。所管する金融庁は新生銀が約3500億円の公的資金を大手銀で唯一返済できていないことを問題視しており、新生銀、SBI双方の計画の実現性などを精査しているとみられる。
(高久清史)