家族がいてもいなくても

(710)ユーチューバーデビュー⁈

イラスト・ヨツモトユキ
イラスト・ヨツモトユキ

緊急事態宣言中、首都圏での仕事は、ほぼ中止や延期に。

が、宣言が解除になっても年内は様子見らしく、講師をする予定の講演がリモートになった。

さすがにこの私も、コロナの間にオンライン会議の「Zoom」画面の中で人と話したりするのには慣れた。でも、リモート講演は初体験。にわかに緊張し、うろたえてしまった。

なのに、担当の彼女は意に介さず、会場ではスクリーンに映して、自宅にも配信しますよ~、なんて楽しそうに言うのだった。

それにしても自分の部屋でパソコン画面の自分に向かって話すって、どういう感じか。

イメージがつかめない。

昔、初めて講演なるものをしたとき、緊張でしどろもどろになったことまで思い出し、急に気分が暗くなってしまった。

その頃は、ビンボーな母子家庭で、頼まれた仕事はできるかできないかは、度外視。なりふり構わずにやったけれど…。

結局、何度、経験しても人前で話すのはうまくはならないし、苦手のままだ。

考えた末に、テレビでよく見る東京都知事の小池百合子さんのように、キャッチフレーズや写真をパネルに貼って、紙芝居風にスライドさせながら話すことにしてみた。

自分で撮った写真を印刷して貼りこんだパネルを何枚も作ってみた。

テーマが「地方でゆる~く働く」というものなので、画面背景は、自分の仕事部屋のごちゃごちゃぶりをそのまま映し出す演出にしてみた。

次は照明。自然光がいいか、蛍光灯がいいか、正面から照らすべきか、いろいろ試した。

画面をスライドするパネルの角度を決め、斜めから顔をのぞかせて話す構図にしてみた。

アップになった顔を見たら、髪がぼさぼさだったので、1年ぶりに美容院にも出掛けた。

さらに「あっ、音が出ない!」なんて事態にならぬよう前日の夕方に、担当の彼女にリハーサルもしてもらった。

で、当日の結果はどうだったか。画面の横に会場や人の顔が小さく映ってはいたけれど、みんなマスクしていて表情まではわからなかった。そして、仕事は無事に終了した。

終わったとたん、ふと私は思った。「ユーチューバーになろうかなあ」と。そんな自分に懲りないヤツだ、と呆(あき)れてはしまったが、リモートで自分で自分に向かって話す分には、ドキドキしないと学んだ初体験でもあった。(ノンフィクション作家・久田恵)