静岡〝令和のコメ騒動〟政局に 自民対川勝氏

定例記者会見で「申し訳ありませんでした」と約20秒間、頭を下げた川勝平太静岡県知事=12日、県庁(田中万紀撮影)
定例記者会見で「申し訳ありませんでした」と約20秒間、頭を下げた川勝平太静岡県知事=12日、県庁(田中万紀撮影)

川勝平太静岡県知事が10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で御殿場市を「コシヒカリしかない」などと揶揄(やゆ)したような発言をめぐる問題は、県議会最大会派の自民改革会議が12日、同県で48年ぶりとなる知事不信任決議案の提出方針を決めるに至った。一方の川勝氏は同日、改めて発言の撤回と謝罪を記者会見で明言し、「公務に徹する」と政務活動の封印も約束した。強硬手段をちらつかせる自民に対し、火消しに躍起の川勝氏。〝令和のコメ騒動〟は政局に発展している。

「問題言動繰り返されてきた」

「不信任決議案を提出したいと考えております」

自民改革会議の野崎正蔵代表は12日、川勝氏に臨時議会招集請求書を手渡したその足で記者会見に臨み、一語一語かみしめるように方針を述べた。ともに臨時会を求めた公明党県議団の蓮池章平団長も同席した。

野崎氏は「一連の知事の言動にはかなり問題がある。これまでも何度も繰り返されてきた」と指摘。今回に限らず過去の言動も問題視した上で、知事としての資質に欠けると判断したと明かした。不信任決議案提出の方針はこの日の会派の議員総会で報告され、異論は出なかったという。

ただ、蓮池氏は「県議会解散の可能性もあるため、党本部や関係各所とも連携して対応する」と述べ、不信任決議案に同調するかどうかは明言を避けた。

不信任決議案可決には、出席議員の4分の3以上の賛成が必要となる。現在の全議員67人が出席した場合、51人以上。自民40人に公明5人、無所属(共産党を含む)5人が加わったとしても、1人足りない。また自民のうち2人は正副議長を務めている。自民は今後、川勝氏を支援する第2会派「ふじのくに県民クラブ」の17人に、個別に同調を求めていくとみられる。

野崎氏は「議員それぞれの良心に訴えながら、成立を目指したい」と語った。

「良心訴え」知事支持派切り崩しへ

不信任案が可決されれば知事は、10日以内に県議会を解散しない限り失職。また議会を解散しても、県議選後に不信任決議案が2分の1以上の賛成で可決されれば、失職する。過去に県で不信任決議案が提出されたのは、昭和48年の竹山祐太郎知事(当時)に対する一例のみ。この際は否決され、可決の前例はない。

ふじのくにの佐野愛子会長は「会派でまとまって対応できると確信している」と述べ、自民側の〝切り崩し工作〟に屈せずに全員反対で否決に追い込み、川勝氏を支える決意を語った。

地方自治法に基づく臨時議会請求は、川勝氏へのもう一つの牽制(けんせい)策だ。御殿場市民から提出されている、知事辞職を求める請願の審議を理由としている。請願した市民は、撤回・謝罪を経ても「川勝氏が県のトップをこのまま続けることは認めない」と述べている。

請願は不信任と異なり、採択されても法的拘束力はないが、出席者の過半数での可決でハードルは比較的低い。すでに川勝氏に手渡された発言への抗議文には、自公と無所属を含む県議49人が名を連ねている。

「請求から20日以内」という招集期限内の今月29日には12月定例会開会が予定されるが、川勝氏は今のところ定例会前の臨時議会招集に応じる構えだ。

20秒間も頭下げ「政務はしません」

川勝氏は12日午後の知事定例記者会見の冒頭、自身の発言について県民に正式に謝罪し、約20秒間、深々と頭を下げた。

「不愉快な思いをさせ、心に傷をつけた。発言は誠に無礼極まりないものだった。特に御殿場の皆さまに対しては、衷心より深くおわび申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」

「不適切な応援弁士だった」とも付け加え、再発防止策として「公人という立場に徹し、やむを得ない場合を除き、政務活動はしません」と表明。「申し訳ありませんでした」と重ねて頭を下げた。

これまでの会見で、9日には「途方もない誤解」と強弁。10日は「傷つかれた人がいる」と謝罪しつつも「政務と公務を峻別する」と述べ、今後も政務は続ける意向を示していた川勝氏。今度は、公務に徹し、「政務封印」のカードを切った。

「反省の実行」低姿勢

その理由について会見で問われると、政務の川勝氏として「応援演説のつもりでも、知事が何を言っているかということでしか(世間から)みられない。深く反省している」と説明した。

さらに「政務だからと言い訳ができるものではない。公人・知事・川勝は一体だ。政務と公務は違うが、政務はすべきではない。それが反省の実行だ」とも述べた。

川勝氏としては猛省の態度を示した形。自民が過去の舌禍も踏まえて知事不信任決議案の提出方針を決めたタイミングと重なるだけに、政務封印という具体的な行動に踏み込むことで、幕引きを図りたいとの意図が見え隠れする。

会見ではまた、自身が応援演説に入った無所属候補の対抗馬だった自民党公認の元御殿場市長、若林洋平氏に対して、個別に謝罪する意向を表明した。

「彼をたたくために、かなり厳しい発言をした。理解してもらえるか分からないが、機会があれば…」

川勝氏の撤回・謝罪会見を受け、御殿場市の勝又正美市長は「1つの区切りだと思う。そのあとの責任などの問題は県議会のほうがやるべきで、それ以上の責任を追及するとかは現在はない」と述べた。だが、御殿場市民や県民からの鳴りやまない批判が、4期目の長期政権に入った川勝氏の足元を揺らがせている。