生きもの好〝紀〟心

キテンハタ報告の顛末⑤ 博物館で紡ぐ発見の証

脇本総志さんがキテンハタを持ち込んでから、論文として報告されるまでの経緯をテーマにした展示会=和歌山県海南市、県立自然博物館(国島大河学芸員提供)
脇本総志さんがキテンハタを持ち込んでから、論文として報告されるまでの経緯をテーマにした展示会=和歌山県海南市、県立自然博物館(国島大河学芸員提供)

本州初記録のキテンハタを和歌山県立向陽中の脇本総志さん(15)が捕まえ、論文として報告するまでのエピソードの最終回となります。前回までで論文は無事受理されました。せっかくの機会なので、多くの方にこの発見を知ってもらいたいと思い、当館(和歌山県立自然博物館)の玄関ホールで、期間限定の展示を行うことにしました。

脇本さんが当館へキテンハタを持ち込んでから標本にし、論文として報告されるまでのいきさつもパネルで簡単に紹介しました。また、プレスリリースも行い、新聞やテレビなど多くのメディアにも取り上げていただきました。この展示をごらんになった児童・生徒の皆さんの中には、脇本さんに憧れを抱いた子もいたようです。

エピソードの最初でもお話ししたとおり、今回の一件は、当館との連携によって学術的にも活用できる形で、市民の発見をきちんと後世に残せた点で意義があると考えています。さらに、研究者ではなく市民の方でもご自身で珍しい生き物を発見し、学術的な場へ報告することができるということも示せました。

これはもちろん、脇本さんがキテンハタのことを知っていたからこそできたことです。ただ、彼が何度も当館へ足を運んでいて普段から一緒に標本作製や情報交換をしていたことも、論文化するにあたって迅速かつ円滑な意思決定、作業を可能にした一因でしょう。和歌山県内の自然や生き物の資料を集めることを大きな目的としている当館としても、脇本さんのように足しげく通い、一緒にお手伝いをしてくださる「仲間」が増えてくれたらとてもありがたいと考えています。

和歌山県は生物多様性の高い地域であり、今回のキテンハタの一件のように、誰もが「発見」に関わることのできる可能性を秘めています。野外で生き物を採集、観察しているうちに、これまで記録のなかった生き物や見慣れない生き物と出会うかもしれません。そんな時はぜひ当館へ連絡してみてください。一緒にその「発見」を後世に残しませんか?

(和歌山県立自然博物館学芸員 国島大河)