HPVワクチン再開 科学的知見の集積で機熟す

子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンの積極的勧奨の再開が12日、厚生労働省の専門部会で正式に認められた。中断要因となった接種後の慢性的な広範囲の痛みなどの症状は接種歴がなくても一定数存在することが判明し、国内外の調査で接種との関連性は確認されなかった。一方で予防効果などのエビデンス(科学的根拠)は集積。安全性と有効性の両立で機が熟した形となった。再開に向け、当事者の女子や保護者らが納得して接種を判断できる環境整備が求められる。

子宮頸がんは国内で毎年約1万1千人の女性がかかり、年間約2800人が亡くなっている。ワクチンは2006(平成18)年に米国で承認され、国内では平成25年4月、小学6年~高校1年相当の女子が原則無料で受けられる定期接種になった。

ただ、直後から広範囲の痛みや手足が動かしにくくなるなどの多様な症状が報告され、同年6月に厚生労働省の専門部会が「持続的な痛みの発生頻度などが明らかになり、適切な情報提供ができるまで積極的に勧奨すべきではない」とし、積極的勧奨は中断された。

その後の調査で、これらの症状はワクチン接種歴のない人でも存在することが判明。名古屋市立大チームは約3万人のデータを解析し、症状の発生率は接種の有無で違いがないとした。欧米の研究でも症状とワクチンの関連性を示すエビデンスは認められなかった。

一方、有効性については導入が進んだ海外を中心に予防効果を示すデータが集まっている。約167万人を対象にしたスウェーデンの調査で、子宮頸がんの発生はワクチンを接種した女性では10万人当たり47人、非接種では94人との結果が示された。有効性が10年以上持続することを示唆するフィンランドの報告もある。

各国の接種率は英国やオーストラリア、カナダで約8割、米国でも5割超。日本では定期接種化前は7割以上だったが、中断後は低迷、1%を割り込む年もあった。医療関係者の間では、子宮頸がん予防で世界から取り残されるとの懸念が強まっていた。

定期接種対象のワクチン2種類は、副反応で「接種部位の痛み」がともに8割以上と発生頻度は高い。専門部会の委員からは「学齢期の子が対象で、痛みが出ること自体は事実だと思う。それを大丈夫だとフォローしてあげる体制が必要だ」との声が上がっている。