HPVワクチン再開、コロナで理解深まる 吉村泰典慶大名誉教授

産婦人科医で慶応大名誉教授の吉村泰典氏
産婦人科医で慶応大名誉教授の吉村泰典氏

子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、厚生労働省の専門部会が12日、平成25年以降中断していた接種の積極的勧奨の再開を正式に認めた。これを受け、元日本産科婦人科学会理事長の吉村泰典慶応大名誉教授に、再開に至る背景や、子宮頸がんの現状などについて聞いた。

--HPVワクチンの積極的勧奨が再開する

「可及的速やかに再開するよう訴えてきた。新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中で、国民のワクチンへの理解が深まっており、世界でも予防効果に関するエビデンス(証拠)が出てきた。機は熟したと感じている」

--どの年代に多いのか

「50年ほど前は40代以降が中心だったが、今は20~30代の発症が増えている」

--妊娠、出産への影響は

「出産期の女性に多いことから、『マザーキラー』とも呼ばれている。妊娠してから子宮頸がんが分かると、最悪の場合、赤ちゃんを諦めて子宮を摘出しないといけないこともある。また、国立がん研究センターなどの研究チームが、子宮頸がんの母親の羊水を吸い込んだことで子供が肺がんになったとする2つの症例を発表した。本人の不利益だけでなく、次世代にも影響を与えるという意味でもセンセーショナルだった」

--副反応が指摘される

「ワクチン接種によって一定の割合で起こるのが副反応で、因果関係が分からないものを有害事象と呼ぶ。ワクチン接種後の持続する痛みやけいれんなどの副反応といわれている症状が接種によって起こったと示すデータはなく、私は有害事象と呼んでいる。ただ、症状が出ていることは事実で、やみくもに推奨するのではなく、学校教育などで病気やワクチンについて理解を深めてもらうことが大切だ。また、特に思春期の女性は、心理的ストレスから増幅した痛みを感じることがある。こうした痛みに寄り添った対応が必要だ」

--積極的勧奨が中止され、接種しなかった人への対応は

「本来なら定期接種を受けていたはずだったのに、国が積極的勧奨を一時差し止めたために打てなくなった。性交渉を経験する前に打つのが望ましいが、そうでなくともある程度の有効性は認められており、該当する人には無償で打てるようにしなければならない」

--女性だけの課題か

「HPVウイルスは誰もが感染しうる。中咽頭がんの原因にもなり、将来的には男性も定期接種の対象とすべきだ。日本は接種率の低さや男性の定期接種がないことなどから、諸外国から圧倒的に後れを取っている」