主張

介護職らの賃金 処遇改善へ抜本的改革を

看護、介護、保育などの現場で働く人の賃金を引き上げるため、公的価格のあり方を見直す政府の議論が始まった。岸田文雄首相が掲げる分配政策の柱の一つである。

いずれも仕事内容に比べて低賃金だと指摘される職種だ。その処遇改善は、社会保障制度の基盤を確かなものとするためにも妥当な取り組みである。

首相は民間企業の春闘に先行する形で賃金の引き上げを実施する考えだ。経済対策に介護職や保育士の賃金を月額で約9千円引き上げることを盛り込む。看護師らの賃上げも検討している。

その具体化を着実に図るのはもちろん、処遇の改善に資する公的価格の抜本的な見直しに腰を据えて取り組んでほしい。

看護や介護、保育などは人手不足が深刻な分野だ。非正規雇用や女性就業者も多い。介護職や保育士の平均賃金は全産業平均と比べると月額で5万~6万円低い。

これらの職種の魅力を高めることは、社会保障の担い手を安定的に確保するためにも重要だ。加えて、民間企業の賃上げ圧力を高めるきっかけとなり、格差の是正につながることにも期待したい。

医療や介護、保育などのサービスの対価は政府が決める。公的価格とは医療の診療報酬、介護の介護報酬、保育所や幼稚園の公定価格である。これを適正な水準にするには、サービスや制度のありようも含めた改革が必要だ。

例えば介護分野で最も人手が不足しているのは、利用者宅に赴いてサービスを提供する訪問介護の現場である。事業所の8割が人手不足を訴えており、介護職の処遇改善が急務となっている。

訪問介護の構造的な問題は、報酬が時間単位で決められているため、介護職の賃金も細切れになりがちなことだ。これでは当然、所得増にも限界がある。

打開するには、サービスをパッケージ的に組み合わせて提供する包括報酬の拡大も一案だ。事業主が介護職を正規雇用化しやすくなり、利用者の生活をトータルで支えることにもつながろう。

看護や介護、保育などの処遇改善を図る上では、そのための安定的な財源をどう確保するかについても、議論を深めなくてはならない。公的価格は税や保険料、利用者の自己負担などで成り立っており、納得感のある方策を具体的に示せるかが問われよう。