ベラルーシ大統領「ガス供給停止も」 EUを脅迫

ベラルーシのルカシェンコ大統領(AP=共同)
ベラルーシのルカシェンコ大統領(AP=共同)

【モスクワ=小野田雄一、ニューヨーク=平田雄介】旧ソ連構成国、ベラルーシに入国した中東などからの移民や難民が欧州連合(EU)入域を目指してポーランド国境に押し寄せている問題で、ベラルーシのルカシェンコ大統領は11日、EU側が新たな対ベラルーシ制裁を発動した場合、EUへの天然ガス供給を停止する可能性を示唆した。制裁回避に向け、ガスを「脅迫材料」にした形。国営ベルタ通信が伝えた。

ルカシェンコ氏は同日の政府会議で、EU側が国境封鎖や制裁発動を検討しているとした上で、ロシアからベラルーシ経由で欧州へとつながるパイプラインを使ったガス供給を「われわれが止めたらどうなるか、EU側の指導者は考えるべきだ」と述べた。

EUのマスラリ報道官は同日、「ベラルーシはガスを地政学的な武器として利用すべきではない」と警告した。タス通信が伝えた。

国連安全保障理事会も同日、この問題を非公開で協議。米国やフランスなど7カ国は協議後の共同声明で「ベラルーシは人間を道具として利用し、危険にさらしている」と非難し、「移民を利用してEUに圧力をかけても成功しないと理解すべきだ」と強調した。一方、ロシアのポリャンスキー国連次席大使は記者団に「誰も移民を送り込んでいない。(欧米側の)問題提起は恥だ」とし、友好国のベラルーシを擁護した。

「欧州最後の独裁者」とも呼ばれるルカシェンコ氏は、昨年8月のベラルーシ大統領選の不正開票疑惑をめぐって起きた抗議デモを弾圧。今年5月にはアイルランド旅客機を強制着陸させ、搭乗していた反体制派記者を拘束した。EUなど欧米側は人権侵害だとしてルカシェンコ政権を非難し、制裁を発動してきた。

欧米側との対立が深まる中、ベラルーシはEUとの協定に基づき実施してきた不法移民の摘発を取りやめ、国境を事実上解放。昨年の数十倍となる数千人規模の移民がリトアニアやポーランド国境に押し寄せ、一部が不正入国している。ベラルーシは移民流入による社会の不安定化を危惧するEUに圧力をかけ、制裁解除など譲歩を迫る思惑だとみられている。