「双方のメンツ立つ和解」オプジーボ訴訟で知財専門家

小野薬品工業のがん治療薬オプジーボ
小野薬品工業のがん治療薬オプジーボ

がん免疫治療薬「オプジーボ」をめぐり、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が、特許使用料262億円の支払いを、共同で特許を出願した製造元の小野薬品工業(大阪市)に求めた訴訟は12日、大阪地裁で和解が成立した。武田薬品工業で知財部長を務め、現在は大学や企業の知財戦略を支援する「知的財産戦略ネットワーク」社長の秋元浩さんは「双方のメンツの立つ和解になったのでは」と評した。

今回の訴訟の過程で、小野薬品工業の相良暁社長が、オプジーボに似た薬を販売する米製薬大手メルク社側から得た収入の40%を本庶氏側に支払うと明言したことが確認された。秋元さんは「口約束とはいえ、株主は、社長の独断で協議が進められたことに不信を抱く。これ以上裁判を長引かせ、多額の支払い命令を受けるリスクを負うわけにはいかなかったのだろう。本庶氏も長期化は望んでいなかったはずで、双方にとって和解はメンツの立つ内容になったのでは」と話す。

一方で、今回の訴訟に象徴される両者の長年の対立は、製薬企業と生命科学分野の研究の関係のあり方を考える上で一つの教訓をもたらすことになった。

秋元さんは「そもそも、両者が契約を結んだ平成18年当時、本庶氏側には企業との契約交渉に明るい人材がいなかった。また、小野薬だけでなく、当時の日本のどの製薬企業も、本庶氏の研究が大発明につながるとは考えていなかったこともあり、対価は低く抑えられた」と説明。その上で、研究と知財管理のいずれにも明るい人材が間にいれば「小野薬と本庶氏の長年のすれ違いは生じなかったのではないか」と指摘する。

新薬の開発など、生命科学分野で社会に寄与する革新を起こしていくためには、先駆的な研究を進める大学などの研究機関と、財源やノウハウを持った企業の協力は欠かせない。

「わが国が科学技術立国を目指すのであれば、研究を目利きし、その知財を企業につなげ、ひいては海外にも売り込めるような人材がこの国には必要だ。政府が育成するか、海外の人材を呼び込んで引き留めるような仕組みの整備が急がれる。改めてその必要性を感じさせた訴訟だった」と話した。

オプジーボ訴訟