細野晴臣、コロナ禍で苦悩 記録映画「サヨナラアメリカ」公開

映画「細野晴臣 サヨナラアメリカ」(C)2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS
映画「細野晴臣 サヨナラアメリカ」(C)2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS

ミュージシャン、細野晴臣(ほその・はるおみ=74)が2019年に行なった米国公演の映像をまとめた映画「細野晴臣 サヨナラアメリカ」が、全国で順次公開されている。新型コロナウイルス流行以前の公演を追ったものだが、映画は今夏の細野の姿もとらえ、コロナ禍で苦悩するエンターテインメントの記録にもなっている。監督の佐渡岳利(さど・たけとし)に話を聞いた。

米国公演の記録

デビュー50周年の一昨年、米ニューヨークとロサンゼルスのライブハウスに出演した際の映像で、自作曲と米国の古いロックンロールなどを、ブギウギやカントリーロックのスタイルで披露している。

古き良きアメリカの軽音楽に対する愛情が伝わる一方、日本人が米国人観客を相手に、いわば米国の伝統的な音楽作法の手本を示そうという大胆極まりない公演でもあった。

映画は、会場を埋め尽くし、熱心に耳を傾ける米国の細野ファンの姿や、彼らの感動の声を収録。実に興味深い。

「この公演については音源がCD『あめりか』として発売されたので、映像作品も作りたいと依頼されました」と佐渡が映画製作の経緯を説明する。

佐渡は一昨年公開された細野の50周年記念ドキュメンタリー映画「NO SMOKING」も手掛けていた。公演の映像は、この映画の素材として撮っていた。

佐渡は元NHKの職員で、大みそかの紅白歌合戦をはじめ音楽番組を多数制作。現在は、NHKの子会社でエグゼクティブ・プロデューサーを務める。映画は、Perfume(パフューム)のドキュメンタリー「WE ARE Perfume-WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」がある。

細野とは平成12年にNHKの番組制作を通じて知り合い、「お呼びがかかったら、はせ参じる関係になった」と笑う。

やめるのやめた

「サヨナラアメリカ」という題名は、細野自身がつけた。しばらく続けていた米国の古い軽音楽スタイルでの演奏活動を、米国公演で最後にしたからだ。かつて在籍したロックバンド、はっぴいえんどの代表曲「さよならアメリカ さよならニッポン」からとったものだろう。

だが、映画は「In Memories of No-Masking World」つまり「マスクがなかった世界をしのんで」という字幕から始まる。単なる演奏の記録にはとどまらない。

「この字幕を入れたのも細野さんの意向。いま公開するなら、コロナの問題は避けて通れない」と佐渡。佐渡はまた、公演映像の合間に、今夏の細野の姿を挟み込んだ。公演で笑顔を見せるのとは対照的な細野が、そこにいる。

ステイホームする細野は建物の屋上で、「コロナの〝演出家〟は誰だ? 自由が制限されるのが怖い」とうめく。また、ラジオ番組の収録で「音楽をやめるのやめた。緊急事態宣言で休んだし、このまま終わるのは嫌だ。音楽は面白い。自由だ。マスク、いらないから」と決意を語る。

「これは、コロナ禍の中でのエンターテインメントのあり方について考える映画でもあります」と佐渡はいう。「皆さんが、これからの生き方を考えるきっかけにもなると思う。幅広い人に見てほしい」

今月5日、細野は東京・日本武道館で開かれた盟友、松本隆の「作詞活動50周年」記念コンサートに出演。〝復活〟したはっぴいえんどの一員として元気な演奏を披露した。歌詞を間違えたが、「日本語の歌詞は覚えられない」と満場の観客を笑わせた。新しい一歩を踏み出したのだ。

「細野晴臣 サヨナラアメリカ」は、東京・シネスイッチ銀座、大阪ステーションシティシネマなどで全国順次公開中。1時間23分。(石井健)