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(212)胸が痛い…普通ではない狭心症とは

50代後半の男性患者さんが胸の痛みを訴えて受診しました。数カ月前から朝方に時々軽い胸の痛みが出るようになり、最近頻度が増してきていました。その日の朝には強い痛みを感じたため、慌てて受診したそうです。しかし診察時にはすでに胸の痛みは消えており、心電図も胸部レントゲンも特に異常は見られませんでした。喫煙以外、健康診断でも異常は指摘されていないそうです。ただ症状などから狭心症の可能性が否定できないため、すぐに循環器科がある病院へ紹介しました。

胸の痛みと聞くと、多くの方は狭心症や心筋梗塞といった心臓病を思い浮かべるでしょう。典型的な狭心症は、動脈硬化で心臓に栄養分を送る冠動脈の内腔(ないくう)が狭くなることから起こります。心臓の筋肉(心筋)が必要とする分の血流を確保できなくなると、心筋は一時的に血液不足となり、痛みや息苦しさといった症状を引き起こします。また血管が閉塞(へいそく)し、そこから先の心筋が壊死するケースを心筋梗塞と呼んでいます。特に心筋梗塞では早急な治療が必要です。

この男性患者さんは詳しい検査の結果、冠動脈の狭窄(きょうさく)による典型的な狭心症ではなく、冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症という診断に至りました。これは、何らかの刺激に対して冠動脈が縮こまってしまい、心筋への血流が減ってしまうために起こるもので、特に日本や韓国など東アジアの人に多いことが報告されています。また比較的女性に多いともいわれています。症状は夜間から明け方に出ることが比較的多いようです。

攣縮が起こるきっかけとしては喫煙が最も強く関係していると考えられており、ストレスや寒さ、過呼吸、飲酒なども挙げられます。まれに心筋梗塞や致死性不整脈を引き起こしますが、おおむね予後は良好な病気です。ただ胸の痛みや苦しさは不快なものですし、不安をもたらすものでもあるため、生活の質を落としてしまう病気ではあります。

治療は、喫煙する人は何はともあれ禁煙です。また、睡眠不足や過度のストレスを避けることや節酒といった生活習慣の改善も必要です。薬は主にカルシウム拮抗(きっこう)薬という種類の降圧薬を使います。

この男性も入院をきっかけに禁煙し、投薬治療も開始となりました。その後はうそのように症状が出なくなったと喜んでいました。苦しい思いをするきっかけになったと知って、たばこはもう全く吸う気にならないそうです。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)