ロシア傭兵、アフリカ進出 欧米が懸念強める

【パリ=三井美奈】政情不安が続くアフリカ諸国に、ロシアの傭兵(ようへい)が進出している。西部マリでは、旧宗主国フランス主導で欧州連合(EU)の支援部隊が展開するが、軍事クーデターで発足した新政権がロシア傭兵への「乗り換え」の動きを見せ、摩擦が高まる。戦争犯罪を辞さない傭兵の手法に、米欧は強い懸念を示している。

ロシア人傭兵は、民間軍事会社「ワグナー」が派遣。リビアや中央アフリカで拷問や処刑など人権侵害を繰り返していると、国連報告書で指摘されてきた。ロシア国内では登記がなく、ロシア政府は「無関係」と主張する。

マリについては9月、政府がワグナーの傭兵1000人を雇うため、契約を結ぶ見込みだと米欧メディアが報じた。これを受け、フランスのパルリ国防相は仏国会で「傭兵との共存など受け入れられない」と述べ、強い懸念を示した。

フランスは2013年、当時のマリ政府の要請を受け、イスラム過激派の掃討作戦を開始。5000人の部隊を派遣してきた。だが、仏軍犠牲者も多く、マクロン仏大統領は今夏、派兵規模を2500~3000人に縮小する計画を発表した。ワグナーは、その空白に入り込もうとしている。

マリでは6月、クーデターで暫定政権が発足。マイガ暫定首相は先月、仏紙ルモンドで「われわれは(フランスに)見捨てられた。別の相手を探すのは当然」と述べ、新たにロシアに頼ることを示唆した。

米財務省資料によると、ワグナーは、プーチン大統領に近いロシア人実業家、エフゲニー・プリゴジン氏が経営する。マリ以外でもスーダンやリビア、中央アフリカなど、アフリカの資源国で傭兵ビジネスを行ってきた。プリゴジン氏は米国の制裁対象だ。

EUは13年以降、マリ軍の訓練支援を続けており、20カ国以上が参加してきた。EUが目指す「共通安全保障政策」の試金石だっただけに、ロシアの傭兵に簡単に取って代わられれば大きなつまずきになる。

特にフランスは、旧植民地の仏語圏アフリカ諸国を「庇護(ひご)者」として支え、経済利権も守ってきた歴史がある。1960年に独立したマリは、アフリカ屈指の金鉱山を持ち、最近ではリチウム開発も進む。

フランス外交は「独裁政権と腐敗を支えてきた」との批判も強く、マクロン氏は、アフリカとの関係刷新を看板にしてきた。マリ作戦の見直しは、その一歩だったが、目算が狂った。アフリカでは中国の経済進出と、ロシアの傭兵ビジネスに挟撃される形となり、EUぐるみで戦略の立て直しが必要になっている。