コロナ禍のメンタル、「孤立」が課題に 不安やうつは快方へ ATR調査

9つの精神症状から抽出された「不安・うつ気分」(青い線)、「社会からの隔絶」(赤い線)などの変動を表したグラフ。下部の青い領域は日本人10万人あたりの新型コロナウイルス感染者の1日の新規症例数の15日間の移動平均値(国際電気通信基礎技術研究所提供)
9つの精神症状から抽出された「不安・うつ気分」(青い線)、「社会からの隔絶」(赤い線)などの変動を表したグラフ。下部の青い領域は日本人10万人あたりの新型コロナウイルス感染者の1日の新規症例数の15日間の移動平均値(国際電気通信基礎技術研究所提供)

長引く新型コロナウイルス禍の影響を受ける精神症状について、不安やうつは快方に向かう一方で、社会的な孤立につながりかねない問題が悪化し続けていることが、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)などの研究チームによる調査で分かった。論文が11日、英精神医学誌に掲載された。不安やうつは収入の減少が悪化要因で、孤立の問題では勤務形態や人間関係が影響していた。時間の経過による変化(経時変化)に沿った適切な対策や支援につながると期待される。

コロナ禍の度重なる外出や行動の制限、休校や慣れないテレワークなどによって、大きなストレスを感じている人は多い。鬱病や依存症などメンタルヘルス不調との関連も指摘され、世界中で研究されている。

ただ、従来の研究はある時点の特定の症状について調べているものがほとんどだった。精神状態は、複数の症状が複雑に絡み合いながら、時間とともに変化する。例えば、「感染への不安から抑鬱的になる」「自粛中の孤独感からインターネットに依存していく」というケースが考えられる。

そこで研究チームは、うつや不安、ネット依存、強迫性障害など9つの精神症状について、1年半にわたって経時変化を調べた。

コロナ禍前の2019年12月、20年の8月、12月、21年4月の計4回、インターネットによるアンケートで約3900人の精神症状を調査。その結果から、特に連動して症状が変化しているものを抽出して分析した。

すると、不安やうつを中心とした問題はコロナの流行に伴って急速に悪化したが、昨年8月にピークを迎えた後は快方傾向にあることが分かった。一方で、対人場面で強い不安や苦痛を感じる「社交恐怖」や、そうした場面を避ける「社交回避」、ネット依存など社会からの孤立に関連した問題(社会からの隔絶)は悪化し続けていた。

回答者の性別や年齢、収入の変化やコミュニケーションの状況などとともに分析すると、不安やうつは収入の減少が悪化要因だった。孤立の問題では、テレワークなどの勤務形態や人間関係の影響が大きかった。

このことからチームは、コロナ禍の初期には経済政策が重要だったのに対し、今後は人と社会とのつながりを取り戻し、維持する施策が必要になるとみている。ATRの岡大樹専任研究技術員は「多様な症状について、コロナ禍の変動を明らかにすることができた。今後も研究を継続し、どの時点でどのような対策が重要になるのかを理解し、社会に貢献したい」と話した。

ひきこもりなど社会から孤立する人や、通常の社会生活に戻るのが困難な人が出てくる可能性もあり、今後コロナが収束しても注意が必要だという。チームの一人で熊本大学病院神経精神科の朴秀賢准教授は、「テレワーク中もオンラインで顔合わせする機会を増やす、会う機会が減った家族とは定期的にテレビ電話をするなど、社会とのつながりを維持することが重要」と指摘した。