苦境のパナソニック 物流DX事業は吉と出るのか

来年度までに勤務シフトを自動作成する「シフト最適化」や、倉庫内の人や機械の動きを分析する「動線分析」などのサービスを順次提供していく計画で、現在、複数の企業が興味を示し、契約に向けて話を進めているという。

今、物流・流通のDXは各企業の大きな課題となっている。

クボタは世界各国にあるグループ会社との生産・流通管理システムの統合を進める。従来は拠点とする国や地域、グループ会社の業態ごとに最適化された管理システムを導入していた。ただ、それではデータが共有できないため、たとえば日本国内の生産拠点では、米国の販売状況を1週間単位でしか把握できなかった。2年後をめどに順次統合システムの運用を開始する予定で、統合が完了すれば1日ごとの生産や販売状況を確認できるようになる。担当者は「米国での販売が順調なのに生産が間に合わず、需要を逃してしまうというようなことがなくなる」と期待する。

一方、国内メーカーの多くが物流や流通のDXを進められていない。ある電機メーカーの担当者は「導入に必要なコストが莫大(ばくだい)であることや運用に必要なIT人材の雇用、育成が難しいことが足かせになっている」と明かす。広く海外に展開している企業が物流の体制やシステムを構築し直す場合、数百億円規模の費用がかかるため、容易に踏み出せないという。

別の機械メーカーの担当者も「そもそも社内にIT人材が少ないので、DXの重要性が浸透しないのでは」と言葉を濁す。

9割の日本企業取り組めず

経済産業省が、昨年12月に公表した「DXレポート2」では、日本企業の全体の9割以上がDXに取り組めていないと指摘した。三菱総合研究所企業DX本部の森崇(たかし)本部長は「そうした状況を変えるには成功事例が重要」とし、「企業が抱える課題をデジタルで解決するような取り組みが広がればDXの重要性も浸透していくはず」と指摘する。

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