暮らし替えの道しるべ

(74)「もの」をめぐる時代と価値観

先日、高齢の方を対象に「いつ死んでも後悔しないお片づけ」というセミナーを行いました。2年ぶりの対面形式です。高齢の親を持つ娘・息子世代に加え、珍しくお孫さんの姿もありました。

子や孫も加わって実家を片付ける前に、知ってほしいことがあります。世代によって時代背景は異なり、それがものの価値観にも影響していることです。

シニア世代はもともと手持ちのものが少なく、頑張って働いてお金をため、憧れのものを購入し、物を持つことが豊かさや幸せに直結していた時代でした。高級ブランドのバッグやスカーフ、最新の家電、車などを持つことがステータスという感覚です。

だから、金具が壊れ、革が傷んだブランドバッグを捨てられない。「まだ使えるのに、捨てるなんてもったいない」。高齢者宅の片づけで、何度も聞いた言葉です。セミナーに参加したお孫さんも「おばあちゃんと片づけていると、なかなか捨ててくれないから、けんかになっちゃう」と言っていました。

一方、孫世代にあたる今の若者は、すでにたくさんのものが家にあるのが当たり前という時代を生きています。ものを持つことが幸せの指標にはなりません。

しかし、どの世代も思いは一つ。ずっとこの家で元気に暮らしたい。暮らしてほしい。だからこそ、片づけをスムーズに進めたい。

例えば、まずは捨てずに段ボールなどに取って置くと、おばあちゃんは「いきなり捨てなくてもいいんだ」と理解して、片づけに積極的になってくれます。(日本ホームステージング協会 代表理事 杉之原冨士子)