TSMC進出の予算確保へ 経産相が半導体製造強化方針

萩生田光一経済産業相(春名中撮影)
萩生田光一経済産業相(春名中撮影)

萩生田光一経済産業相は10日の閣議後記者会見で、半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県での工場建設を決めたことに関連し、半導体の製造基盤の確保に向けて「必要な予算の確保と数年度にわたる支援の枠組みを速やかに構築したい」と述べた。半導体の供給網強化をめぐっては米国などが大規模な財政支援をしており、萩生田氏は「他国に匹敵する措置」を講じる考えも示した。

TSMCとソニーグループ子会社は、熊本県に半導体受託子会社を設立し、同県菊陽町に新工場を建て、2024年末までの生産開始を目指す。当初の設備投資額は約70億ドル(約8千億円)の見込みで、約1500人の先端技術に通じた人材の雇用を創出する。

不足する半導体供給力を高めようと米国など各国が先端半導体工場の誘致合戦を繰り広げる中で、日本進出の決定は経済安全保障の観点からも重要な機会といえる。

小林鷹之経済安全保障担当相も閣議後記者会見で、TSMCの熊本工場に関し「率直に歓迎したい」と述べた。経済安保の観点から、半導体の供給網強化の必要性を指摘。国内にある半導体関連産業の既存工場について「刷新を図らないといけない」とも話し、関係省庁と連携して取り組む考えを強調した。

岸田文雄首相は半導体確保に向け、19日にも取りまとめる新たな経済対策に半導体工場の国内立地支援などを盛り込む方針。萩生田氏は、来週に産学の有識者を集めた半導体・デジタル産業戦略検討会議を開催するとし、「政策の具体化に向けた議論を集中的にしっかりやっていきたい」と意気込む。

半導体市場をめぐっては、急成長する中国への対抗だけでなく、自動車向けなど深刻な半導体不足や不安定な供給網が、各国の経済安全保障を脅かしている現状がある。こうした状況を背景に、政府は今年6月、「半導体デジタル戦略」を掲げ、半導体産業を国家事業と位置づけた。

日本としても急ピッチの対応が迫られる中での先端半導体を手掛ける台湾企業進出は追い風ととらえることができる。

ただ、先端半導体の工場を1カ所誘致しただけで戦略がうまくいったと判断するのは早計だ。今回のような案件を次々と打ち出し、人材育成を含め、半導体分野での日本の技術的優位性を高められるかが課題であり、政府の一層の対応が求められる。

また、新工場の当初の設備投資額は約70億ドル(約8千億円)を見込む。政府は基金を創設し、一定の要件を満たせば工場建設費の半分程度を補助する案などがある。枠組みが正式に決まれば、補助は数千億円規模になるとみられる。一企業に巨額の支援を行う点に関しては、中長期的な国内半導体産業の発展につながるとの国民理解を得られるような説明が求められる。(那須慎一)