ビブリオエッセー

不器用だけど愛がいっぱい 「ねこと王さま しごとをさがす」ニック・シャラット作・絵 市田泉訳(徳間書店)

『ねこと王さま しごとをさがす』は『ねこと王さま』の続編です。機嫌の悪いドラゴンにお城を燃やされた王さまが一番の友だちのねこと町へ引っ越し、小さな家に暮らすことになる顚末を描いた前作。今作は底をついた生活費を稼ぐため王さまが仕事を探すお話です。

しっかり者のねこはまず王さまにできる仕事のリストを作ります。「手をふること」「テープカットをすること」「人にメダルをあげること」「赤いじゅうたんの上を歩くこと」「おもいかんむりを頭にのせること」…。得意なことを並べてできることを見つけていくやり方は、実際の求職にも役立ちそうです。

が、これまでは「王さま」が仕事だった王さま。これはむいていると思われた仕事も働いてみると思いもよらないトラブルでうまくいきません。駅のアナウンス係はいつもの癖で「みなのもの」と始まり、博物館の受付係は展示された大昔の貴重な王の椅子に座ってしまい、たちまちクビに。転職をくり返し、ようやくめぐりあったのが交通指導員の仕事でした。

やっと適職を見つけたと思った矢先、再びあのドラゴンが現れます。果たして結末は?

どんな人にも適した場所があると気づかされるこの児童書。大人が読んでも楽しめます。むしろ大人なら自分の仕事をふりかえり、より考えさせられるのでは、と思います。

巻末には、お菓子作りの得意なねこが作るお菓子のレシピがついています。手作りのジンジャーブレッドクッキーを食べながら読むと、さらに物語にひたることができるでしょう。

王さまが好きなのはスーパーの前に置かれた子供用の乗り物でした。ケーキを作って喜んでもらえることを大切にしたり、ささやかな幸せを描くこの絵本。心が動かされました。

神奈川県大和市 なっしー(53)

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