活写

神戸の街シネマ 個性豊かに心も近く

シネマ神戸の岸本倫子さん
シネマ神戸の岸本倫子さん

明治29年に日本で最初に映画が上映されたとされる神戸。かつて映画館がひしめき、「映画の街」といわれたが、今、その多くが消えていった。それでもコロナ禍やネットによる映画配信も乗り越え、奮闘する小さな映画館がある。そんな神戸の〝街シネマ〟4館に「映画館とはどんな場所ですか」と問い、答えをパネルに書いてもらった。

パルシネマしんこうえん、小山岳志さん
パルシネマしんこうえん、小山岳志さん

かつて映画館や劇場が立ち並んだ娯楽の街、新開地(同市兵庫区)。ここには今も、旧(ふる)い作品を1日2本立て上映する「名画座」が2館、残っている。

その一つ、「パルシネマしんこうえん」。小山岳志支配人は、パネルに、常連さんに問いかけて返ってきた「ただいまと言いたくなる映画館」という答えを書いた。これを聞いたとき、胸が熱くなったという。小山さんは、上映の合間に自ら「前説」したり、「お茶会」を開くなど観客との距離を縮める努力をしてきた。それが届いた気がしたからだ。さまざまな取り組みで、かけがえのない場所と信じ、父から受け継いだ映画館を守っている。

シネマ神戸の岸本倫子さん
シネマ神戸の岸本倫子さん

もうひとつの名画座「シネマ神戸」は、地域密着型だ。近隣の人たちがいつも顔を出し、しばらく見ない人がいると「顔見んから心配しとったわ」と気遣われる。台風などの際、避難してくる住民がいるので休館できないほどの距離感だ。木谷明博支配人は「うちはお客さんに生かしてもらってる劇場」と笑う。スタッフの岸本倫子(のりこ)さんの掲げるパネルには「映画を通じて広がるコミュニティーのパラダイス」と書かれた。

神戸アートビレッジセンター(KAVC) 岡本酉子さん
神戸アートビレッジセンター(KAVC) 岡本酉子さん

新開地には、劇場を併設する映画館、神戸アートビレッジセンター(KAVC)もある。映像事業担当の岡本酉子(ゆうこ)さんは「点を線に変えられる場所」と話す。岡本さんは、目の肥えたシニア層の観客に期待し、若手の制作者を育てるため、彼らの作品を多く見てほしいと願う。パネルには「シニア観客が、若手制作者を育て、若い観客を増やす」とある。映画館は世代を超えた交流の場としての役割もある。

元町映画館支配人の林未来さん
元町映画館支配人の林未来さん

社会派作品の上映が多い元町映画館(同市中央区)のパネルは「世間の常識を疑う力を養い、学ぶ場に」と書かれている。問題作も積極的に取り上げる同館らしい答えだ。林未来(みらい)支配人は「さまざまな問題を考える時間は重要。地方からでも世界に問題提起ができる。それが、うちの存在意義」という。日本一イベントの多い映画館を自負し、ピアノの生演奏付き上映や講座などにも取り組む。

学生でつくる映画応援団「映画チア部」とパルシネマが企画したオールナイト上映会を鑑賞後、装飾を手に記念撮影する映画ファン=パルシネマしんこうえん
学生でつくる映画応援団「映画チア部」とパルシネマが企画したオールナイト上映会を鑑賞後、装飾を手に記念撮影する映画ファン=パルシネマしんこうえん

4館で企画した映画館と飲食店を巡るスタンプラリー「神戸シネマポートフェス」も参加者が昨年の倍以上と盛況だ。「各館の熱意や人柄も魅力」との声も多く、グッズにはスタッフの似顔絵が描かれている。

即興演奏付きサイレント映画上映のリハーサルをする楽士の鳥飼りょうさん。ライブ感と、名作の新たな魅力を発見できることが人気で、関西からブームになりつつある=元町映画館
即興演奏付きサイレント映画上映のリハーサルをする楽士の鳥飼りょうさん。ライブ感と、名作の新たな魅力を発見できることが人気で、関西からブームになりつつある=元町映画館
「神戸シネマポートフェス」の景品やグッズ
「神戸シネマポートフェス」の景品やグッズ

映画ファンで常連の一人は「4館は、距離も心も近い。映画ファンにとって神戸は最高の環境です」と話してくれた。