「アリの街」支えた2人後世に 東京・台東の小学校へ児童書寄贈

贈呈する図書の目録を手渡すポーランド広報文化センターのユスティナ・ログスカ副所長(左端)=9日、台東区役所(慶田久幸撮影)
贈呈する図書の目録を手渡すポーランド広報文化センターのユスティナ・ログスカ副所長(左端)=9日、台東区役所(慶田久幸撮影)

戦後間もなく、廃品回収で生計を立てていた人たちが東京・浅草(台東区)付近に集まり暮らしていた通称「アリの街」。この街とそこを献身的に支えた2人の功績を伝えようと、同区民らとポーランド広報文化センターが共同で児童書140冊を9日、同区立の19小学校に贈った。2人はポーランド人カトリック修道士、ゼノ・ゼブロフスキーさん(1891?~1982年)と北原怜子(さとこ)さん(1929~58年)。区は「子供たちも後世へと語り継いでほしい」としている。

アリの街は当時、都内にいくつもあった戦災で家を失った人たちが生活していた地域の一つ。貧しく、社会から蔑(さげす)まれた人々の間に飛び込んできたのが「神父」と呼ばれ、親しまれたゼノさんだった。

食料や衣類を与えるだけでなく、住民とともに廃品回収業を組織化した「蟻(あり)の会」を作り、安定した生活が送れるようにした。北原さんはゼノさんの勧めで、この街に住み、子供らに勉強を教えるなど奉仕し「アリの街のマリア」と呼ばれた。

一時は、メディアにも数多く取り上げられ、映画化や八千草薫さん主演で舞台化もされたが、時の流れとともに忘れられていった。

しかし、北原さんの没後60年を前にした平成29(2017)年、同区東上野で日本茶販売の三幸園を経営する北畠啓行さん(81)ら区民などで「アリの街実行委員会」を結成。2人の活動を発掘し、写真展や演劇を通じて広めていった。

昨秋、女子パウロ会が「北原さんはアリの街で声なき声を聴いていた。それを伝えられないか」として、『アリの町のクリスマス』を出版した。

これをきっかけに実行委は、子供らにも知ってもらおうと、ポーランド大使館に呼び掛け、アリの街関連の児童書を集め、区内の小学校に贈ることにした。

同書のほか、『ありがとうゼノさん』(女子パウロ会)、ロシア革命時、シベリアにいたポーランド人孤児を救出した日本赤十字社の活動を紹介する『ポーランド孤児を救った日本赤十字社』(ポプラ社)など日本とポーランドの友好を伝える書籍も含まれている。

贈呈式は台東区役所で行われた。出席したポーランド広報文化センターのユスティナ・ログスカ副所長は「ゼノさんのほかにも日本とポーランドの関係は長い歴史がある。こうした活動を通じて、少しでも知ってもらえたらうれしいです」とあいさつした。

書籍を受け取った同区教育委員会の佐々木洋人庶務課長は「かつて区内にアリの街があり、ゼノさんと北原さんという素晴らしい人がいたことを、子供たちにも語り継いでほしい」と期待を込めた。