朝晴れエッセー

父の命日・11月9日

7年前の秋、息子の結婚式当日に父は亡くなった。83歳の父は祖父から受け継いだ小さな椎茸(しいたけ)問屋を忙しく営みながら、毎週一度はエアロビクス教室にも通い、人一倍健康にも気を使う人だった。

母から連絡があったのはお昼前だった。父が教室で転倒し意識を失ったとのこと。慌てて病院に駆け付けたが脳出血による昏睡状態で医者も手の施しようがなく点滴による薬剤投与のみの治療となった。

一週間後には息子の結婚式が予定されていた。心待ちにしていた初孫の結婚式である。強行すべきか、万が一の場合はどうすればいいのか。その日は主人や母、弟妹らと深夜遅くまで話し合いが続いた。

そして、父には申し訳ないが、予定通り結婚式を行うことに決めた。父の看病、式や披露宴の打ち合わせなど慌ただしい日々が続いた。

何とか当日を迎え、神社での挙式、ホテルでの披露宴とスケジュールは順調に進んでいった。披露宴も無事終わり、ご招待客をお見送りした際に弟がいないことに気付いた。心臓が波打つ。妹が目配せして近づいてきた。「お父さんが亡くなったよ」。ああやはりそうだったんだ。

「お父さん、最期に立ち会えなくてごめんね。でもお父さんのかわいがっていた孫の結婚式は無事終わったよ」と心の中でつぶやいた。迷惑をかけまいと、披露宴が終わるまでひとり病室で必死に頑張ってくれていたのかと思うと一気に涙があふれた。

「お父さん、本当にありがとうね」

父の命日と息子の結婚式は一生忘れられない日となった。今年もその11月9日がやってきた。

外山涼子 (63) 宮崎市