TOKYOまち・ひと物語

「物々交換」で浅草を元気に 宇賀村敏久さん

「浅草もの繋ぎプロジェクト」の発起人、宇賀村敏久さん。浅草の魅力を発信している=東京都台東区(鈴木美帆撮影)
「浅草もの繋ぎプロジェクト」の発起人、宇賀村敏久さん。浅草の魅力を発信している=東京都台東区(鈴木美帆撮影)

「地元のために何かやれないか」。コロナ禍で活気を失った浅草(東京都台東区)。カレー店を営む宇賀村敏久(42)さんは、街を元気にしたいという思いから、店の商品を次の店へ、「物々交換」でつなげていく「浅草もの繋ぎプロジェクト」を始めた。祭りを通じて醸成された地元愛のつながりを生かし、浅草の魅力を発信している。

新型コロナウイルスの影響で切迫した飲食店などの状況を見て、「このままではだめだ」と思った宇賀村さん。自身のカレー店「SPICE SPACE UGAYA(スパイス スペース ウガヤ)」(同区)も、一時期は収入が4分の1になるほど苦しかった。

そんな中、同じく苦境にあった銀座(中央区)の和菓子店店主の発案により行われていた「物々交換」により街の魅力を発信するプロジェクトを知った。次の店につなぐ様子を会員制交流サイト(SNS)に投稿することで多くの人に街や店、商品の魅力を知ってもらう活動を見て「これなら手軽にできる」と、すぐに教わり、取り組んだ。

リレー形式

1店目の商品を2店目へ、2店目の商品を3店目へと渡すリレー形式で「物々交換」を行う。今年2月に始め、履物や扇子、祭礼具、雷おこし、パンなど、街の商店から老舗店まで、15社が参加した。

リレーの様子は、宇賀村さんがインスタグラムで投稿。集客を目的とせず、「物の魅力を伝えたい。みんなが頑張っていることを発信したい」と、店の歴史や扱っている商品の説明などをつづっている。

店を構える「観音裏」と呼ばれる浅草寺の裏の地域は、知る人ぞ知る小さな店が多い。投稿を見て客が訪れた店もあり、魅力が伝わっていると感じている。

浅草で生まれ、祭りを通じて幼い頃から街に関わり続けてきた。デザイン制作の仕事をした後、「地元で稼いで地元に還元したい」とカレーを学び、店を開いた。浅草馬三町会青年部に属し三社祭などに尽力、浅草寺の伝統的な舞「金龍の舞」では舞手も務めている。祭りは「浅草に生きていることに誇りを持てる」と、常に心の中心にある。

「祭りが浅草。生まれたときからあるのが当たり前で、命を懸けている」。多種多様な店が積極的に参加してくれる土台には、「祭りを通じた強い地元のつながりや、地元のために『一肌脱ぐ』人が多い」ことが影響しているという。

地域越えて

浅草の街は南部、東部など地域ごとに特色があるが、今回は地域を越えて盛り上がっている。コロナ禍の窮地がきっかけだったが、「『浅草という街が好き』が前提でつながった」。これを機に、共同でオリジナル商品を作ったり、ECサイトを立ち上げたりなど、挑戦したいアイデアがたくさんある。

街の人出は戻ったが、大々的に祭りは行えておらず、まだ「浅草なのに浅草じゃない」。まずは「店が元気にならないと」という思いを胸に、「100社までつなぎたい」と意気込んでいる。

「知らないことを知ることができ、より浅草を好きになった。せっかくつながれたし、もっと新しいことをやりたい」。浅草ならではの絆がさらに深まるよう、一石を投じている。(鈴木美帆)