IHIの宇宙ビジネスに追い風 イプシロン打ち上げ成功

9機の衛星を搭載し、打ち上げられる小型ロケット「イプシロン」5号機=9日午前9時55分、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所
9機の衛星を搭載し、打ち上げられる小型ロケット「イプシロン」5号機=9日午前9時55分、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型ロケット「イプシロン」5号機が9日、打ち上げに成功した。同型機で最多となる9機の人工衛星を搭載したほか、平成25年の初号機以来、全ての打ち上げに成功したことになる。衛星打ち上げサービスの需要拡大が見込まれる中、設計と製造を手掛けるIHIにとっても宇宙ビジネス拡大の追い風となりそうだ。

イプシロンは、液体燃料を使う別の国産基幹ロケット「H2A」に比べ、小型で構造が比較的シンプルな固体燃料ロケットだ。打ち上げ費用は50億円前後と安くないが、令和5年に実証機が打ち上げられる次世代の「イプシロンS」では30億円以下に引き下げられる見通し。打ち上げサービスをIHI子会社のIHIエアロスペース(IA、東京都江東区)に移管することも決まっている。

ロケットによる衛星打ち上げの需要は年々高まっている。ベンチャー企業などが、小型衛星を使った画像サービスや通信サービスを相次ぎ開始。大量に打ち上げた衛星を1つのシステムとして運用する「衛星コンステレーション」の浸透も需要拡大を後押しする。

もっとも、同分野はイーロン・マスク氏の米スペースXに代表されるベンチャーや新興国も虎視眈々と狙う。既に価格競争は激化しており、海外の打ち上げ費用は競争激化で5億~20億円程度まで下がっているともいわれる。

日本でもホンダが9月末に宇宙事業へ参入し、一部を回収して使い回す「再使用型」の小型ロケットを開発すると発表。ほかにもキヤノン電子などが設立し、IAも出資するスペースワン(東京都港区)は、イプシロンより小型の「カイロス」を、来春までに和歌山県串本町に新設した日本初の民間発射場から打ち上げるなど、打ち上げ市場への参入が相次いでいる。

IAは、ライバルと違い打ち上げ時期や軌道の要望に応えられる点や、衛星を受け取ってから10日以内で打ち上げられる点などをアピールしていく考え。IHIの宇宙事業の売上高は2年度で約200億円。全体(1兆1129億円)に占める割合は小さいが、今後の拡大が見込める上に、日本の科学技術の発展や宇宙ビジネス拡大にも貢献できる。IAの湊将志イプシロンプロジェクト部長は「日本国内や、打ち上げ手段を持たないアジア新興国の小型衛星事業者をターゲットにしていきたい」と意気込んでいる。(井田通人)