「走る八百屋」農業後押し、野菜ソムリエ白木さん3位

農家から旬の野菜を仕入れて販売している白木浩二氏=北九州市
農家から旬の野菜を仕入れて販売している白木浩二氏=北九州市

北九州市で八百屋を営む白木浩二氏(40)が、日本野菜ソムリエ協会(東京)主催の「野菜ソムリエアワード」で全国3位となる銅賞に輝いた。白木氏は野菜ソムリエとしての知識を生かし、農家を回ってその時一番おいしい野菜を買い付ける「走る八百屋」。適正価格を見極め、農家の安定収入につなげるのが信条だ。この活動が日本の農業が抱える課題解決にも役立つと奔走している。

納得の野菜扱う

白木氏は北九州市戸畑区の店舗「かのえ」や、同市内3カ所で週1~2回ずつ開くマルシェで野菜を販売している。多くの八百屋が市場から野菜を仕入れる中、白木氏は直接農家を訪れ、収穫期を迎えた野菜を買い付ける。北九州市内を中心に宗像、直方など周辺地域にも車を走らせ、野菜を積み込む日々を送る。

野菜ソムリエは、同協会が認定する民間資格で、野菜や果物の知識を持つ約6万人が資格を保有する。白木氏はこの中でも145人しかいない上級プロで、八百屋としておいしい野菜を追求し、15年にわたり野菜の魅力を分かりやすく伝えている点が評価された。アワードはソムリエの活動発表の場として開かれ、今回は約100人が応募した。

白木氏は25歳で資格を取得。当時は人脈がなく、農家や市場に飛び込み、畑作業やイベントの手伝いをしながら生産者らとの関係を築いた。「トマトでも甘いトマトを作る人もいれば、甘さに酸味を加えて味の深みを出す人もいる。直接生産者の話を聞いて仕入れるので、お客さんにこだわりを伝えられる」と語る。

畑で話を聞き、実際に食しながら、自身が納得する味の野菜を取り扱う八百屋となった。

農家の視点

白木氏は農家と消費者をつなぐ役割を果たし、日本の農業の課題にも思いを寄せる。

市場では、どの生産者が作った野菜も、種類ごとにほぼ同じ値段で売られている。旬の野菜が多く集まれば値段は安く付けられる。

「市場では味よりも量や見た目で値段が決まる。肉や魚は良質なものは高い値段が付くが、野菜は安くて当たり前で、農家が費用や月日をかけて作っても、味で値段が付きにくい」

農家が稼げなければ担い手も増えない。白木氏は、適正価格で販売することが農業の安定につながると考え、生産者の提示価格をできる限り考慮する。市場より高い価格で仕入れることになるが、おいしさを尺度に価格を設定することで、客も納得して購入する。

スーパーなどでは季節関係なく野菜が手に入るが、白木氏は何でもそろう八百屋は目指さない。

「野菜には旬があり、その時ないならないでいい。農業は自然相手。天候によっては注文した量の野菜が取れないこともある。仕入れ量や価格を事前に決めてしまうと、農家の負担が増すこともある」

生産者が安定的に農業を続けられる販売スタイルを常に意識している。

シンプルに

野菜の魅力を客に伝えるとき、栄養素など難しい説明はしない。

「お客さんが知りたいのは、その野菜がおいしいかと、料理の仕方。ズッキーニならナスの代わりに使えてナスほど荷崩れしないなど、別の野菜に置き換えて伝える」

新型コロナウイルス感染拡大で、飲食店や流通の現場が大きな打撃を受けた。白木氏が野菜を届ける飲食店も厳しい状況が続く中、「野菜を切り口にいろんな店や業界とからみ、地元を盛り上げる活動をしたい」と意気込む。

おいしい野菜で食べる人の気持ちを明るくする。そんな思いも抱き、仕入れた野菜を車に乗せて走り回っている。(一居真由子)