主張

東証の時間延長 魅力高める不断の改革を

日本取引所グループが東京証券取引所での現物株式の取引時間を30分延長し、午後3時半までとする。令和6年度後半に実施する考えだ。終了時間が繰り下げられるのは約70年ぶりである。

システム障害などで取引が停止しても当日中に再開できる時間的な余裕を増やすほか、投資機会を拡大し、株式市場としての国際競争力を高める狙いもある。

方向性は妥当だが、わずか30分の延長だ。これだけで、海外との競争激化により低下した東証の存在感が高まるわけではなく、時間延長はその一歩にすぎない。国内外の投資を呼び込むには、上場する企業も含めて市場の魅力を高める不断の改革が求められよう。

現在の株取引は午前9時に始まり、1時間の昼休みをはさんで午後3時までの計5時間である。ロンドンの8時間30分やニューヨークの6時間30分、シンガポールの7時間などと比べると短く、取引所としての使い勝手が悪い。

取引時間拡大は過去に何度も模索された懸案で、時間延長や夜間取引なども検討された。だが、システムや人員の負担増への証券業界の懸念もあり頓挫してきた。それが今回、30分の延長となったのは、売買が終日停止になった昨年のシステム障害がきっかけだ。時間が足りず当日中に復旧できなかったことを教訓に、そのリスクを減じる時間延長を決めた。

東証は6年度後半のシステム更新も予定しており、障害で停止したシステムを再び立ち上げる時間が短縮される。これと併せた取引時間の延長で危機対応能力を高める考えだ。円滑に実施できるよう業界との調整を進めてほしい。

もちろん、危機対応だけでなく投資家の利便性向上も重要だ。さらなる時間拡大についても、改めて議論を深めてもらいたい。

上場企業も投資先としての魅力を高める必要がある。多くの企業は株価への影響を考慮して取引時間終了後に情報開示を行うが、30分延長に合わせて開示まで遅らせるというのはおかしい。むしろ取引時間中でも迅速な開示で投資家に判断材料を提供すべきだ。

来年には東証第1部などの市場区分がプライム市場などに再編され、これまで以上に上場企業の経営の質が問われる。こうした改革を積み重ねることで新たな投資を呼び込み、「貯蓄から投資へ」の流れを確かなものにしたい。