現金給付で苦杯の過去 首相、二の舞回避なるか

第2回新しい資本主義実現会議で発言する岸田文雄首相。右隣は山際大志郎新しい資本主義相=8日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)
第2回新しい資本主義実現会議で発言する岸田文雄首相。右隣は山際大志郎新しい資本主義相=8日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)

8日に自民、公明両党の調整が本格化した18歳以下の子供への一律10万円相当の給付金をめぐり、岸田文雄首相の対応が注目されている。昨年4月、新型コロナウイルス対策で当時党政調会長だった首相が主導した減収世帯への支援策が公明の主張を受け入れる形で覆った苦い経験があるためだ。自公で隔たりのある給付金の協議は首相の調整力の試金石となる。

「連立政権なので、お互いしっかりと詰めていく。歩み寄りも必要ではないか」

8日夜、自民の高市早苗政調会長は自公協議についてこう述べた。協議では10万円相当の支援の必要性では一致したが、給付対象は「自民はどちらかというと低所得」(茂木敏充幹事長)の人を対象とし、一律給付を目指す公明とは隔たりが大きい。給付金は分配政策を掲げる岸田政権の目玉だが、与党内の調整に手間取れば、首相にとって「悪夢」の再来となりかねない。

昨年4月、緊急経済対策として生活困窮世帯に1世帯当たり30万円を給付する案を政調会長だった首相がまとめ、財源の裏付けとなる令和2年度補正予算案を閣議決定した。当時、この方針の決定にあたり「大企業や年金生活者などコロナの打撃がない人に配るのは不公平」と訴えた財務省の意見が反映されたといわれている。

ところが、所得制限に伴い受給手続きが複雑になるとして公明から再考を迫られた首相官邸が土壇場で決定を撤回。全国民への一律10万円給付を決め、補正予算案の閣議決定をやり直す異例の事態をたどった。矢面に立った首相の調整力が疑問視され、「ポスト安倍」が遠のいた。

今回、首相の対応が焦点になっているのは、コロナ対策で大型の財政出動を求める自民内の一部から首相が「財務省寄り」とみられていることもある。月刊誌への寄稿で与野党の政策論争を「バラマキ合戦」と批判した矢野康治財務事務次官について、党内には「辞めさせなければ政局だ」(重鎮)と更迭を求める声がくすぶる。首相周辺は更迭には慎重だが、首相と財務省との距離が今後の政局の火種になりかねない。

首相が公明党の攻勢に屈する形で給付金の詳細設計を決めたと映ればバラマキ批判が再燃し、逆に、所得制限などで支給対象が狭まれば来夏の参院選で公明党の協力が得にくくなるリスクを伴う。首相の「聞く力」の真価が問われそうだ。(小川真由美)