「公共交通の救世主」が盟友にささげるフェリー

高松港に入港した第十一こくさい丸。7月に小豆島とを結ぶ航路に就航した
高松港に入港した第十一こくさい丸。7月に小豆島とを結ぶ航路に就航した

国際両備フェリーがこの夏、高松-小豆島・池田航路(香川県)で、新造フェリー「第十一こくさい丸」を就航させた。フェリーの新造は、同社の前身でもある国際フェリーの創業者、片山鹿之助氏の悲願だったという。片山氏は昨年11月に急逝。盟友として小豆島航路発展のために尽力してきた両備グループ代表で国際両備フェリーの小嶋光信社長(76)は、新造フェリーに特別な思いを抱く。「公共交通の救世主」とも呼ばれる小嶋社長にその思いを尋ねた。

展望室で会見する国際両備フェリーの小嶋光信社長。左は愛称を命名した小学生
展望室で会見する国際両備フェリーの小嶋光信社長。左は愛称を命名した小学生

ゾウのデザインが特徴的

新造フェリーは「しまぞう」という愛称が付けられた。総重量1213トン、定員は500人。船尾のマストをはじめ、座席など船内各所のゾウをモチーフにしたデザインがあるのが特徴だ。旧国際フェリーは愛称パンダ号やキリン号など、代々、動物をイメージした船を就航していた。

片山氏は合併後も、国際両備フェリーの相談役として旧国際フェリー部門の陣頭指揮をとっていた。

4月の進水式に際し小嶋社長は「片山さんの思いのままに造っていただこうと建造のトップにすえた。3年前に手書きのポンチ絵(構想図)を見せられ、子象を連れて高く鼻を上にあげている象さんのアイデアを語られた」と振り返った。

片山氏について「四十数年前に旅客船業界に入った当時、既に大先輩。小豆島の航路を守る同志として、魅力ある船をつくるアイデアの良きライバルとして、楽しい議論をした仲間」と回想した。

昨年11月、片山氏は来客中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人に。小嶋社長は「一段と厳しくなる大きな変革期に手腕を発揮してもらおうと思っていたので愕然(がくぜん)とした」と語る。

「おりんぴあ どりーむ せと」の進水式に出席した小嶋光信社長(前列中央)と片山鹿之助氏(2列目、右から2人目)=平成31年3月、愛媛県今治市の藤原造船所(国際両備フェリー提供)
「おりんぴあ どりーむ せと」の進水式に出席した小嶋光信社長(前列中央)と片山鹿之助氏(2列目、右から2人目)=平成31年3月、愛媛県今治市の藤原造船所(国際両備フェリー提供)

窮地の公共交通

小嶋社長は東京生まれ。銀行員を経て、昭和48年、義父から両備運輸の再建を頼まれ常務に。両備グループ各社の経営を手がけ、平成11年にグループ代表になった。

南海電鉄が断念した貴志川線の経営を引き継ぐため和歌山電鉄を設立、猫のたま駅長やユニークな改装電車などのアイデアが話題に。数々の地方公共交通の再建を請け負ってきた。

「地方の鉄道、バス会社などは規制緩和により競争原理にさらされ、新型コロナウイルス禍で壊滅的な打撃を受けた。先進国の公共交通で民設民営は日本だけ。日本も公設民営的な考え方を採り入れないと公共性は守れない」と、持論を主張する。

第十一こくさい丸の記者発表運航では操舵室の内部も公開された=7月13日
第十一こくさい丸の記者発表運航では操舵室の内部も公開された=7月13日

島が生き残る道とは

国際両備フェリーは本社を岡山市に、本店を香川県小豆島町に置く海運会社。池田航路のほか、新岡山港と小豆島・土庄港を結ぶ。昭和3年設立の南備海運合資会社を起源に持つ両備フェリーを、昭和38年に設立された国際フェリー(平成19年に両備グループ入り)が、令和2年4月、吸収合併する形で国際両備フェリーになった。

「共倒れせずに小豆島の海上アクセスを残すために航路ごとにすみ分けを図りつつ刺激し合ってきた」という国際フェリーと両備フェリー。観光航路の色合いが濃い両備フェリーと生活航路の国際フェリーの合併は航路存続のための決断でもあったという。

さらに昨年8月には、支援要請に応える形で小豆島の草壁港を拠点とする内海(うちのみ)フェリーも子会社化。航路の集約や役割転換を進めている。

「島は人口が激減しているのに航路、便数をそのままにすれば、全て倒れかねない。集約による航路の体質強化が長続きへの得策だ」という。

船内の各所にゾウをデザイン。愛称「しまぞう」の甲板には白いブランコも
船内の各所にゾウをデザイン。愛称「しまぞう」の甲板には白いブランコも

そのうえで、小豆島を世界的な観光地に発展させ、島に大きな経済効果をもたらして活性化させるビジョンを描く。

世界的な旅行雑誌のランキングでも瀬戸内は評価が高い。「寒霞渓(かんかけい)をはじめオリーブ公園など魅力的な観光資源が豊富だ」

小嶋社長の原動力は「小豆島航路を守るという片山さんとの約束を果たしたい」という思いだ。(和田基宏)

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