朝晴れエッセー

むかごの贈り物・11月8日

私の家の前の小さな畑には、秋、たわわに実る柿の他に、もう一つ楽しみがある。

それは、山の芋のむかごをポロポロ採ること。母から昔、祖母があの畑で山の芋を作っていたと聞いていた。祖母が畑仕事をしていたのは、今から約130年も前のことになるだろう。

親の代には、柿や梅の木の畑となっていた。今も山の芋のつるが、いろいろなものに巻きついてのぼり、むかごをたくさんつける。その生命力に驚いている。

土の下には巨大な山の芋があるのだろうか。スコップで掘ってみればわかることなのに、ミステリーのままだ。

この山の芋のむかごは祖母が作っていたものの子孫であることは確かだ。

私には祖母の記憶はない。私が1歳のとき、祖母は亡くなった。

その頃、私は肺炎にかかって、お医者さんも匙(さじ)を投げた状態で、両親は私のお葬式も考えていたそうだ。

両親は一縷(いちる)の望みを託して、私の体を布できれいに拭き、その布を祖母のひつぎに入れて「どうか、この子の病気を一緒に持っていって…」とお願いしたそうだ。

「あんたは、奇跡的に助かったんだよ」と親がよく言っていた。

年月が流れ、また豊かな秋が巡ってきた。山の芋のつるの葉が黄色に色づくと、むかごの収穫の合図だ。むかごご飯、茶碗蒸し、かき揚げなど野趣あふれる料理が食卓に上る。

私に命をつないでくれた、おふゆおばあさんからの秋の贈り物をかみしめる。今年も。


田川あつ子(73) 兵庫県川西市