貴重な地形や地質を持つ自然公園「日本ジオパーク」の一つに選ばれている「ジオパーク秩父」(埼玉県秩父市など)が、認定継続に向けて正念場を迎えている。日本ジオパーク委員会による令和元年の審査では、運営上の課題があるとして「条件付き再認定」を受けており、改善したと評価されなかった場合、認定が取り消される可能性があるからだ。委員会は来年1月に予定している会合で再認定の可否を検討する。
ジオパーク秩父は秩父市と横瀬、皆野、長瀞、小鹿野の4町をエリアとし、平成23年に日本ジオパークの認定を受けた。
長瀞町の荒川沿いに幅数十メートル、長さ約600メートルにわたって広がる岩畳や、約1550万年前の地層が露出している小鹿野町の国指定天然記念物「ようばけ」、秩父盆地の山々を一望できる秩父市の秩父ミューズパーク展望台などが、ジオパークを構成する「ジオサイト」に位置づけられる。
元年の審査では、地域内でのジオパークの理念共有や事務局の体制強化などが認定継続のための条件として指摘された。
理念の共有に関しては、1市4町と埼玉県などで構成する協議会が、専門家を招き、協議会の担当者や地域住民を対象にジオパークの持続可能な開発などに関する講習を行ってきたほか、今年6月には公式ガイドブックも発行した。事務局の体制については、協議会に設置している専門部会の数を1つから3つに増やすなどして、保全に向けた取り組みを強化した。
さらに、ジオサイト選定の根拠のあいまいさが問題視されたことを受けて、この点を明記した計画の策定にも着手。案内の仕組みに工夫が必要だという指摘を踏まえ、ガイド役を目指す人のための講習も始めた。
日本ジオパーク委員会は今月6日までの3日間、再認定の可否の判断材料とするため、ジオパーク秩父の現地調査を行った。
協議会の担当者によると、委員会の調査員からは「事務局の体制を財政負担のない形で強化した」「ジオパークの広報活動に協力している民間の事業者や団体がある」といった評価を受けたという。
担当者は「高い評価をいただいた。引き続き認定を受けて、秩父らしいジオパークを維持していきたい」と話した。(深津響)
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日本ジオパーク 環境保護に加え、教育や観光振興に関する地域の取り組みを委員会が評価して認定する。全国44地域が認定されており、このうち9地域は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界ジオパークに選ばれている。