児童書

『ありがとうのうたをうたえば』 歌にはパワーがある

新型コロナウイルス禍で世の中が混乱し始めた昨年3月、作者の自宅庭にやってきた一羽のクロウタドリ。まるで、歌を歌うかのような見事なさえずりを耳にした作者は、「巣ごもりで寂しい思いをしている子供らに勇気を与えたい」とこの物語を紡いだという。

主役のクロウタドリがまず、キツネに美しい歌を聞かせる。キツネは目を覚まし、森のシカにその歌を伝えるとヒツジやネズミ、マス、クジラへと、あらゆる生き物が歌い出す。歌の輪は、病院や避難所、刑務所に至るまで人間の世界にも広がっていく。口を大きく開いて合唱するみなの表情は、明るく輝いている。

そういえば、昔見たミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」で流れていた心躍る歌声を思い出す。モデルとなったトラップファミリー合唱団も、歌で激動期を生きる人々を慰め、笑顔にしたのだった。

仲間たちと心置きなく歌ったり、笑い合ったりすることの喜び。歌にはパワーがあることを改めて感じさせる。(マイケル・モーパーゴ作エミリー・グラヴェット絵、杉田七重訳/小学館・1650円)

横山由紀子