新聞に喝!

他国の「選挙干渉」は身近な脅威 日本大教授・小谷賢

第49回衆議院選挙が終了した。わが国では年齢が高いほど投票率が上がるので、「シルバー民主主義」と揶揄(やゆ)されて久しい。高齢者ばかりが選挙に行き、若者が選挙に行かなければ、政治家は自然と高齢者の方を向くようになる。議会制民主主義の先達とされる英国においても若者ほど投票しないとされるが、2016年の国民投票で欧州連合(EU)離脱が決定されたことで、その意識は変わりつつある。当時、若者の大勢はEU残留派で、年齢が上がるほど離脱派が増えるという具合であった。若者が投票へ行かなかったばかりに、EU離脱という結果が出てしまった可能性も否定できず、それを教訓として英国の若年層が政治に関心を持つようになった。

今後、わが国のさまざまな選挙に影響を与える要素としては、やはり若者の選挙への参加が挙げられる。現状、20代の投票率は3割台にとどまっており、有権者の1%が動けば1割の小選挙区の結果が変わるというデータもある。若者が積極的に参加すれば、日本の政治を少しずつ変えていくことが期待できるし、シルバー民主主義を前提とするマスコミの選挙予測も再考を迫られるようになろう。今回の衆院選でも、マスコミによっては、自民党の苦戦と立憲民主党の躍進を予想していたようだが、これは期待先行の感があり、蓋を開けてみれば真逆と言っていいような結果であった。この点については各社に再考を促したい。

もう一つの要素はサイバー空間にある。恐らく多くの有権者がネットを通じて候補者やその政策を確認したと思うが、ネット上にはフェイクニュースや偽情報も多く出回っており、これが今後の選挙の趨勢(すうせい)に影響を与えるかもしれない。既に諸外国では中国やロシア発とみられる偽情報によって、選挙結果が影響されるような事例も散見される。

2016年の米国大統領選では、ロシアのハッカーが当時の民主党大統領候補であったヒラリー・クリントン氏の個人情報を不正に入手し、ネット上にばらまいたことで、選挙を混乱させた。その後もフランス大統領選や2020年の米国大統領選、台湾総統選においても、外国勢力による偽情報の流布があったとされており、民主主義国はネットを通じた偽情報工作の洗礼を受けている。10月30日付産経朝刊の特集記事「解読」でも今後の外国政府による選挙干渉の可能性を示唆しているが、個人的にはもう一歩進めて、早急にマスコミのファクトチェック体制を盤石のものにする必要があると考える。

【プロフィル】小谷賢(こたに・けん)

昭和48年、京都市生まれ。京都大大学院博士課程修了(学術博士)。専門は英国政治外交史、インテリジェンス研究。著書に『日本軍のインテリジェンス』など。