冬眠前に柿求め? ウッドデッキの衰弱クマ、殺処分に抗議も

民家のウッドデッキで横たわるクマ(兵庫県佐用町提供)
民家のウッドデッキで横たわるクマ(兵庫県佐用町提供)

兵庫県佐用町の民家のウッドデッキで10月31日、ツキノワグマとみられる高齢のクマが横たわっているのが見つかった。衰弱し、山に戻ろうとしなかったため町が捕獲し、殺処分した。「周辺住民への影響など、さまざまな事情を考慮した」と町の担当者。一般的にクマは冬眠に入る前の10~11月、餌を求めて行動圏が拡大するとされ、市街地周辺でも出没する可能性があるという。

クマは雌とみられ、体長は約1・2メートル、体重は約30キロ。ツキノワグマの寿命は15年程度とされるが、このクマは「12歳程度」(担当者)だった。住民の男性(73)が10月31日朝に発見し、兵庫県警や町に連絡、避難のため近くにある別棟に移動した。駆けつけた町職員らは交代でクマを監視するなどしていた。

一方、クマは当初から弱っていた。発見から24時間が過ぎた11月1日昼以降も動いたり、山に帰ったりしようとする様子がみられなかった。このため同日午後2時半ごろ、町が捕獲の上、殺処分した。

この事案の報道後、町には複数の抗議が寄せられたという。「殺処分は人間のエゴではないか」などとの内容だった。町の担当者は取材に「居住者の方は避難し、近隣の住民や施設への影響もある。さまざまな方の意見を伺いながら判断した」と話した。

なぜ衰弱したクマが横たわっていたのか。クマの生態に詳しい富山市ファミリーパークの山本茂行名誉園長(70)は「約30キロの体重は、クマが生存できるかどうかの極限状態」と指摘。「病気や寿命などで十分に食べられず、動けないほど弱っていたのだろう」と推察する。

民家の周辺にある柿の木の幹には、クマによるものとみられる爪痕が見つかった。クマが木に登ろうとしていた痕跡とみられ、冬眠前に柿を食べようとしていた可能性がある。

佐用町内では10月に約20件のクマの目撃情報があり、町が注意を呼び掛けていた。全国的にも一昨年から出没件数が増えており、環境省によると、今年4~8月は8626件。特に多かった昨年の同時期(1万1112件)と比べ減少しているが、担当者は「例年と比べ多い」と話す。

クマに遭遇した人が死傷する被害も少なくない。山本氏は「クマの個体数が増えている上、過疎化で人がいなくなった里山に進出した。市街地のすぐ近くまでクマの生息域が広がっている」と分析している。

マニュアル改定「正しく恐れて」

近年のクマの出没件数の増加を受けて、環境省は今年3月、出没を防ぐための日ごろの備えや遭遇時の対応に関するマニュアルを14年ぶりに改定した。

マニュアルでは、人の安全確保のために自治体と警察などが連携して対応した事例として、昨年10月に石川県の商業施設にクマが侵入したケースを紹介。事前の備えとして、住民がクマの生態や遭遇時の対応などを学ぶ学習会を例示した。

また、人の生活圏への出没防止策や遭遇した際の対応策として、不要な果樹や樹木は伐採し、落下した果実を放置しない▽クマが開けられない構造のごみ箱を導入する▽遭遇した場合は目を離さずゆっくり後退する-などを挙げた。

環境省の担当者は「クマは臆病で、自分から人間を襲うことは少ない。知識を身につけて正しく恐れることが大切だ」と述べた。