ワクチン会場、官学連携で 東京都墨田区に千葉大協力

千葉大の墨田キャンパスを使った接種会場では、色のついた誘導サインが設置され、同大の学生スタッフも事務作業を手伝っていた=10月、墨田区(永井大輔撮影)
千葉大の墨田キャンパスを使った接種会場では、色のついた誘導サインが設置され、同大の学生スタッフも事務作業を手伝っていた=10月、墨田区(永井大輔撮影)

墨田区が設置する新型コロナワクチンの接種会場に、区内に今春、キャンパスが開設された千葉大の知見が生かされている。高齢者の多い地域特性に合わせ、会場設営にデザインの技法を取り入れ、学生を事務スタッフで採用するなど大学側が全面的に協力。コロナ禍の船出で「地域貢献したい」との思いも実り、新たな官学連携の形として注目を集めそうだ。

東京スカイツリー近くにある千葉大墨田サテライトキャンパス。1階のワクチン接種会場の床や壁には「予診」や「接種」などの手順に、「橙」や「青」など6つの色を連動させた誘導サインが設置され、接種を受ける人が進むエリアが視覚的に分かる工夫がこらされている。

同キャンパスに拠点を置く工学部デザインコースの研究分野である「視覚伝達デザイン」の技法を導入。高齢者向けに「接種券」や「予診票」などの必要書類をまとめて保管できるファイルも合わせて考案し、表紙に会場と同じ色分けをした手順を書き込んだ。

区内の集団接種会場はこのデザインで統一しており、監修した張益準准教授は「どの会場に行っても、ファイルを持っていけば間違いなく接種できる状況を作った」と胸を張る。

そもそも同キャンパスは、地元企業の経営・技術支援の拠点だった「すみだ中小企業センター」の跡地利用で、区が平成29年に誘致を決定。教職員や学生による地元商店街の利用者増加や地域の調査・研究などで地域活性化につながることが期待されていた。

ところが、開設された今年4月は、コロナの感染拡大「第4波」に差し掛かった時期で、同25日には都に3度目の緊急事態宣言が発令された。授業はオンラインが中心となり、キャンパスは閑散としていた。

一方、同時期に高齢者の優先接種が始まり、区側は密を避けながら集団接種に対応できる会場選びに苦心していた。大学側に接種会場としての活用を打診したところ、「地域貢献になれば」と快諾を得られた。区によると、大学への接種会場設置は当時、全国的にも例がなかったが、5月に開設し、ピーク時の7月には半日で最大約180人に接種できる体制を整えた。

千葉大の会場では同大の学生もアルバイトとして働いており、足りない事務スタッフを補っている。工学部3年の鶴岡英輝さんは「ワクチン接種という医療現場で手伝いができるのは貴重な経験。デザイン系の学科なので本来なら関わる機会はなかった」と話す。

千葉大との連携は接種会場にとどまらず、第4波の終盤には区内繁華街の人出を分析してもらい、区民への啓発・感染対策の呼びかけに生かしたという。

墨田区のワクチンの2回目接種率は8割を超えており、全国を上回るペースで進んできた。区企画経営室の郡司剛英参事は「大学とハード、ソフトの両面で連携が取れたことも含め、地域の総合力が奏功した結果だ」と力を込めた。(永井大輔)