海面を大量の軽石が漂い、浜辺に押し寄せて一帯を茶色に染める。港にも入り込んで滞留し、漁船などが身動きできなくなっている。
いま、沖縄本島や鹿児島県の離島でみられる光景だ。
海底火山が原因とみられる軽石の漂流で沖縄、鹿児島両県の漁業や観光などに深刻な影響が出ている。多くの漁船が出漁できず、養殖魚が誤飲して死ぬ被害も出た。
軽石は今後、一部が黒潮にのって北上し、関東地方沖合に達する可能性もある。海洋研究開発機構のチームがスーパーコンピューターで分析した結果、11月末ごろに千葉、神奈川両県などの沖合に到達するとの予測が出た。政府は関係自治体と連携し、早急に除去するなど被害の拡大防止に全力を挙げてほしい。
軽石は、千キロ以上離れた小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」で8月中旬に始まった噴火により発生したとみられ、約2カ月かけて沖縄などに漂着した。農林水産省や国土交通省によると、5日時点で沖縄、鹿児島両県の計81の漁港や港湾で確認されている。
このため漁船の出漁不能、養殖作業の中断、マリンレジャーの休止など被害が広がっている。沖縄県漁業協同組合連合会によると、マグロの水揚げ量は先月に比べて3割ほど減少している。
一般生活にも影響が及び、沖縄・久高島では定期船が一時全便欠航となった。鹿児島・与論島では発電所に重油を運ぶタンカーが接岸できず、このままでは島全体が停電する恐れもある。
両県とも現在、重機を使った軽石の撤去作業を進めている。国交省も2日、撤去費用の一部を補助すると発表した。だが、財政支援だけでいいのか。撤去が長引けば被害は拡大する。
サンゴなど生態系にも悪影響が出るだろう。専門家の派遣や機材の提供など、より積極的な対策が求められる。
船が軽石を吸い込むとエンジントラブルなどの原因となる。沖縄県では漁船数十隻が故障したほか、海上保安庁の巡視艇が航行不能になる事故も起きた。
軽石の漂流は衛星画像などでも確認できる。政府は情報収集に努めて航行中の船に注意喚起し、漂着が予想される場合はオイルフェンスを準備するなど、先手先手で対応すべきである。