相次ぐ水道トラブル、耐震化懸念も 背景に運営難

崩落した六十谷水管橋(奥)と仮の水管が設置された六十谷橋=10月8日午後4時40分、和歌山市(本社ヘリから、彦野公太朗撮影)
崩落した六十谷水管橋(奥)と仮の水管が設置された六十谷橋=10月8日午後4時40分、和歌山市(本社ヘリから、彦野公太朗撮影)

全国の水道管の17・6%が耐用年数を超え、漏水など水道施設のトラブルが相次いでいる。10月7日に首都圏を襲った地震では各地で水の噴出が発生、これに先立つ同3日には、和歌山市で耐用年数が近づく水管橋の崩落事故も起きた。首都直下地震などが懸念される中、国や自治体には点検能力の高度化や修繕・耐震化の優先度決定などの対応が求められる。

和歌山市の紀の川に架かる水管橋は先月3日、全長546メートルのうち中央付近の約60メートルが崩落し、約6万世帯が断水した。水管橋は市が昭和50年3月に設置し、平成27年度に耐震化工事を実施するなどしていたが、事故後の調査で崩落しなかった部分でつり材4本が腐食によって切れていることが判明した。

厚生労働省は事故を受け、水道管だけでなく水管橋にも補助対象を拡大。設置から40年以上が経過した水管橋本体の耐震化や補強について工事費の3分の1を補助することを決めた。

国内の水道は昭和40年代以降に集中整備され、老朽化が進む。厚労省によると、法定耐用年数(40年)を超過した水道管の割合は平成30年度時点で国内約72万キロのうち17・6%に上る。水道管の材質は性能が向上し、更新すれば使用可能年数は大幅に延びるが、1年間で更新できる長さは5千キロ弱で0・68%にとどまる。

更新が滞る背景には、市町村などが運営する独立採算制の水道事業での厳しい経営環境がある。給水量の低下で料金収入は平成10年代後半から減少。値上げなどで現状はほぼ横ばいに抑えられているものの、住民の少ない地域では原価割れを起こしている所もある。約30年後には、国内の水需要ピークだった平成12年の3分の2程度になると試算されている。

安定供給に欠かせない耐震化も低調だ。全国の基幹的な水道管で、想定される最大規模の地震に耐えられる割合を示す「耐震適合率」は令和元年度末時点で40・9%(前年度比0・6ポイント増)。10月7日に首都圏で最大震度5強を観測した地震では千葉県市原市で水管橋から水が噴出した。金属ボルトの腐食が原因とみられている。都内では水道管の弁からの漏水も相次いだ。

過去には平成28年の熊本地震で約45万戸が最大約3カ月半、30年の北海道胆振(いぶり)東部地震では約7万戸が同1カ月以上にわたって断水した。今後30年以内に大規模な首都直下地震の発生も懸念されており、対策は急務となっている。厚労省の担当者は「耐震化を進めておかないと首都直下地震などで水道が寸断される恐れがある」と指摘する。

政府は災害発生時の備えとして、給水系統の複線化の必要性を強調するが、新たな工事費などが必要になるため二の足を踏む自治体も多い。令和元年には水道事業の運営権の民間委託や近隣自治体同士の広域連携促進を盛り込んだ改正水道法が施行され、宮城県や大阪市など民営委託の導入を目指す自治体がある一方、サービスの低下を不安視する向きもある。当面は計画的な補修や更新を続けて水道施設の延命を図るしかないのが現状だ。

厚労省の担当者は「事業者には数十年単位で維持や点検、更新などを含めた収支を見通して、計画を立ててもらう必要がある」と話している。

会員限定記事会員サービス詳細