流通やサービス業などでつくる産業別労働組合「UAゼンセン」は5日、令和4年の春季労使交渉(春闘)方針の素案を明らかにした。基本給を底上げするベースアップ(ベア)の水準を「全体として2%基準」とした。政府による賃上げ機運が高まる中、労組としても賃上げに向け働きかけたい考えだが、傘下には新型コロナウイルス禍の影響が色濃く残る業種も多い。企業業績の格差が広がる中、賃上げの流れをどこまで作っていけるかが問われそうだ。
「今回は異例の年という表現は使わない」。UAゼンセンの松浦昭彦会長は、素案について説明した政策フォーラムの中で、そう強調した。新型コロナで企業業績に大きな差が生じた3年の春闘では、2%の賃上げ率に幅を持たせる「異例の対応」(松浦会長)を取った。
しかし、ワクチン接種が進み経済活動が再開される中、多くの企業で業績改善の兆しが見える。ただ、飲食や観光など一部でまだ最悪期を脱していない業種もある。こうした現実に配慮しつつ、今回は個別ではなく「全体として」ベア2%を目指すことにした。来年1月20日の中央委員会で正式決定する。
岸田文雄政権は〝令和版所得倍増〟を掲げ、企業に賃上げを求めており、4年春闘の動向に注目が集まっている。労組の中央組織である連合も10月にベア要求を、月給の「2%程度」とする基本構想を発表。定期昇給分と合わせ計4%程度の賃上げを目指す考えを示している。
ただ、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で行われた「官製春闘」でも、賃上げは一部の大企業にとどまり、十分に広がらなかった。コロナ禍の影響がくすぶる中、当時を超えるような賃上げの流れが生み出せるか、注目される。
(蕎麦谷里志)