「グータッチ」の安全神話 過信は禁物

新型コロナウイルス下で手を握りあう握手が敬遠される中、互いのこぶしを突き合わせる「グータッチ」が定着した。選挙やスポーツの場面にとどまらず、日常生活でも目にしたという人は多いだろう。手の接触面積を減らしつつ、他人と触れ合いたい工夫ともいえるが、専門家は「グータッチだから安全ということはない」と話す。

10月31日に投開票された衆院選。街頭での演説の際や、当選確実が伝わった選挙事務所の中で、与野党問わず関係者によるグータッチが多用されていた。

大阪府内の選挙区に挑んだ野党前職の陣営幹部はグータッチについて「握手の代わりに支持の広がりを実感できるコミュニケーション」と語る。選挙戦が終盤になると、熱意のあまり本人が勢いよく有権者に接触してしまうこともあったというが、この前職は選挙区で落選してしまった。

握手と比べ、グータッチは確かに接触する面積は小さく、時間も短い。だが近畿大の吉田耕一郎教授(感染症学)は「グータッチにもリスクはある」と断言する。

「手の甲側で鼻や目を触ったりする人もいる」と吉田氏。肘どうしで触れ合う「肘タッチ」の方がリスクは低いとしながらも、吉田氏は「感染対策を一番に考えれば、そもそも身体の接触を避けるべきだ」とくぎを刺す。

こうしたリスクを知ってか、ある与党前職の陣営は互いのこぶしを接触させず、ギリギリで止める「エアグータッチ」を徹底。陣営関係者は「しっかりとコロナに配慮しているということを見せる意味合いもある」という。気遣いが功を奏したのか、前職は無事に当選を果たした。

選挙戦以外では、主にスポーツの歓喜のシーンなどでグータッチが多用される傾向にある。本塁打を放った野球選手がチームメートと、バーディーパットを沈めたゴルファーがキャディーと、こぶしを突き合わせる姿もみられる。影響を受け、日常生活の中で実践したという人も少なくないだろう。

コロナ感染拡大の「第5波」の収束とともに、飲食店への時短要請などが順次解除され、日常が戻りつつある。どんな工夫をしてもリスクを完全になくすことは難しい。引き続き第6波への警戒が呼びかけられる中、改めて基本的な対策を心がけていきたい。(花輪理徳、小泉一敏)