主張

世界津波の日 「避難」のみが人命を守る

11月5日は、「世界津波の日」である。

日本が主導し、142カ国が共同提案国となって2015年12月の国連総会で制定された。

10年前の東日本大震災では、1万8千人を超える人命が津波の犠牲になった。インド洋大津波(04年12月)の犠牲者は22万人にものぼる。

さまざまな自然災害の中で、津波の発生頻度は高い方ではないが、人の命に対する脅威は極めて大きい。だからこそ、津波の恐ろしさを心に刻み、次世代に伝えていくことがとても大事だ。日本が提唱した「世界津波の日」を、津波災害の教訓と命を守る「避難」の大切さを世界に発信し、共有する機会としたい。

世界津波の日は、旧暦の11月5日に起きた安政南海地震(1854年)で、多くの人命を津波から救ったとされる「稲むらの火」の逸話に由来する。多くの命が失われた教訓だけでなく、命を守る行動の大切さを伝えたい、という思いが込められている。

大津波から家や土地を守り切ることはできないが、命は守れる、守り抜かなければならない。そして、津波から命を守る手立ては「避難」しかない。

地震や火山噴火とは違って、津波は何の前触れもなく起きることはない。東日本大震災の場合は、巨大地震の発生から大津波の沿岸到達までに数十分から1時間程度の時間差があった。これを避難行動に当てれば、1万8千人もの命は失われずに済んだはずだ。

北海道南西沖地震(1993年7月)では、地震発生の4~5分後に奥尻島を襲った。多くの犠牲者を出したが、その10年前の日本海中部地震を教訓に、即座に避難して助かった住民もいる。

避難行動に迷いがあったら、1時間はすぐに経過する。直ちに逃げれば、わずか数分でも命を守れる可能性はある。

気象庁の警報や自治体の避難指示などの防災情報に気を配ることは必要だが、津波に関しては「揺れたら、迷わず避難する」ことに徹しなければならない。

災害時には「自分は大丈夫だろう」と思い込もうとする正常性の偏見(バイアス)が働くことにも留意する必要がある。迷いや偏見に打ち克(か)つ、強い避難意識を平時に養いたい。

重ねて書く。津波から命を守る手立ては「避難」しかない。