鑑賞眼

浅利演出事務所「ユタと不思議な仲間たち」〝ひとは生きるに値する〟

「ユタと不思議な仲間たち」(浅利演出事務所提供、友澤綾乃撮影)
「ユタと不思議な仲間たち」(浅利演出事務所提供、友澤綾乃撮影)

「もっと生ぎでるっつごどを大事にするもんだよ。いいが生ぎでるっつごどはな、それはそれだけでたいしたいいもんなんだぞ」-。都会からやって来た少年ユタに「生きているってすばらしい」と南部弁でやさしく語り掛ける座敷わらし。

青森県出身の三浦哲郎の同名小説を原作に、劇団四季の創設メンバー、浅利慶太(1933~2018年)が企画とオリジナル演出を手がけたミュージカル「ユタと不思議な仲間たち」(作曲・三木たかし)に登場する一場面だ。

昭和52年に劇団四季で初演されて以来、再演を重ねてきた名作。今回の上演は浅利演出事務所の主催で、演出は浅利の妻で女優の野村玲子、振り付けは自身も本作に出演していた加藤敬二と、浅利の演出を熟知する2人が担当している。

今回、野村は出演する俳優たちの個性を生かした役作りに注力。その俳優の心の動きに添った芝居を引き出している点は浅利と同じだ。それぞれの俳優の個性を生かした演出のためか、2年前の前回(浅利慶太追悼公演)とはかなり印象が違うかもしれない。

親分肌の座敷わらし、ペドロ(下村青)の圧倒的な存在感。ヒノデロ(近藤真行)は歌舞伎の女形のようだ。ユタ(横井漱)は「都会のもやしっ子」からたくましい田舎の少年に成長する姿は好感が持てる。

当初はファミリーミュージカルとして上演されてきたが、普遍的なテーマなので大人も鑑賞できるように舞台が改変されてきたこともあってか、初日の観客席に子供の姿はほとんどなく、大人の観客で埋め尽くされていた(10月22日所見)。