焦点はゼロ金利解除に インフレに不透明感 米FRB

米首都ワシントンにある米連邦準備制度理事会(FRB)の建物(共同)
米首都ワシントンにある米連邦準備制度理事会(FRB)の建物(共同)

【ワシントン=塩原永久】米連邦準備制度理事会(FRB)が量的金融緩和の段階的縮小(テーパリング)開始を決め、今後の焦点は事実上のゼロ金利政策の解除に移る。パウエル議長は景気を支えるため、ゼロ金利を当面維持する必要性を強調するが、金融市場では、FRBがインフレ封じの早期利上げに動かざるを得なくなるとの見方が浮上。パウエル氏やFRB幹部による今後の発言の変化に注目が集まる。

FRBが量的緩和を縮小して金融を引き締める決定をしても、この日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、過去最高値を更新して取引を終えた。

投資家は11月の緩和縮小着手を想定済みで、相場が混乱する兆しはなかった。

パウエル議長らFRB幹部は、雇用改善の鈍化を示す統計が発表されても、年内の緩和縮小に言及し続けてきた。2013年、FRBが緩和縮小を唐突に示唆したことで、投資家が動揺し、市場が混乱した「テーパー・タントラム」の再来はなく、FRBの「市場とのコミュニケーション」は万全だったといえる。

投資家の関心はすでに利上げ時期に移ったが、パウエル氏は記者会見で、緩和縮小が利上げに関する方針を「なんら示唆するものではない」と指摘。労働市場が「まだ完全雇用まで回復しきっていない」と述べ、景気を支え続ける必要性があるとの認識を示した。

新型コロナウイルスが本格流行する前の昨年2月に比べ、米国の就業者数は依然、約500万人少ない。

このところ物価上昇は、すでにFRBが目標とする2%超を大きく上回っている。コロナ禍後の巨額財政出動と、経済活動の活発化で、すでに景気は過熱気味だったが、一段と物価上昇の見通しを難しくしているのは、物流停滞をはじめとするサプライチェーン(供給網)の混乱だ。部品や材料の調達難は物価を押し上げる圧力になる。

パウエル氏は「感染症が沈静化すれば供給網の目詰まりは緩和」していき「物価上昇も今の水準から弱まる」と説明した。一方、FRBの声明は、従来「一時的」と断定的に示してきたインフレの見通しに関する表現を弱め、将来の見通しに不透明性が強いことを示唆する表現となった。

市場では物価上昇が長引くとの想定を踏まえ、FRBが来年、複数回の利上げを実施するとの予想を織り込み始めている。ゼロ金利解除が早まり、利上げが急ピッチになれば、市場に混乱をきたす懸念が一段と強まる。それだけに、パウエル氏は今後、雇用と物価の見通しでどのようなメッセージを打ち出し、ゼロ金利解除の方針をどう判断するのか、難しいかじ取りが迫られる。