鑑賞眼

新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」際立つ演劇性

「白鳥の湖」の第2幕。中央手前は福岡雄大(左)と米沢唯(鹿摩隆司撮影)
「白鳥の湖」の第2幕。中央手前は福岡雄大(左)と米沢唯(鹿摩隆司撮影)

米沢は悩める王子に寄り添い、〝母性〟で包み込むオデット。それがオディールになると目付きからして一変。時に薄笑いを浮かべて王子を挑発し、大人の〝女性〟の手練手管を見せるかのよう。福岡ともども磨き上げた技術で難度の高い振付も軽やかに見せ、ともに看板ダンサーにふさわしい存在感。王子が翻弄されるのも納得、なのだ。

そして第4幕、王子の裏切りが判明し、悲しみに暮れる白鳥たちの群舞に、心を揺さぶられた。もともと群舞の美しさには定評のあるバレエ団だが、スモークの中で白鳥たちがたたずんでいるだけで、悲嘆の空気が伝わる。「語れる群舞」にまで進歩した印象。その中で、死によって永遠の愛を成就させようとする王子とオデット。福岡と米沢の、声が聞こえてくるようなパ・ド・ドゥ(男女二人の踊り)が切なく、オデットは湖に身投げし、やがて王子も後を追う-。

ライト版ならではの幕切れ。ベンノが王子の亡骸を抱いて足取り重く登場すると、その後方に、あの世で身を寄せ合う2人の姿が現れる。現世では結ばれなかった男女の悲劇と、2つの世界の明暗が、象徴的に示されるのだ。ひたすら舞踊としての美しさを追求する「白鳥」もあれば、こんなドラマ性を追求する「白鳥」もある。同じ作品ながら、解釈や演出の違いでこうも印象が変わるのか-という発見をもたらしたライト版。個々のダンサーの演技力が増し、一人一人が粒だって見えたのも、大きな収穫だった。

10月23日、東京・初台の新国立劇場オペラパレス。公演は11月3日で終了。(飯塚友子)

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