「悪い円安」日本経済にブレーキも

3日、FRBのパウエル議長の映像が流れるニューヨーク証券取引所にあるスクリーン(AP)
3日、FRBのパウエル議長の映像が流れるニューヨーク証券取引所にあるスクリーン(AP)

米連邦準備制度理事会(FRB)が3日に量的金融緩和策の縮小を決め、市場の関心は来年にも見込まれる利上げのタイミングに移る。米金利の上昇で国内の資金が米国に流れ、日本経済に悪影響を及ぼす「悪い円安」が進行すれば、新型コロナウイルス禍からの回復にブレーキをかける懸念が強まる。大規模な金融緩和策の出口戦略を描けていない日本銀行は厳しい立場に追い込まれかねない。

FRBが政策金利を引き上げて米金利が上がれば、0%程度にとどまる日本との金利差が広がる。投資家は米国内で投資した方が利益が上がるため円を売ってドルを買い、為替相場は円安ドル高に動く。パウエル議長は3日、利上げには慎重な見方を示したが、こうした将来の動きを先取りして相場が動きやすくなる。

円安は原油価格の高騰とも重なって輸入物価を押し上げる。エネルギーなど資源が乏しい日本では企業の原材料コストがかさみ、ガソリンや食料を始めとした国内製品の値上げが消費意欲を減退させかねない。

一方、円安が進むと輸出企業の売り上げ上昇を通じ日本経済にもプラスに働くが、この恩恵は以前に比べて小さくなった。円相場は2011年10月31日に戦後最高値の1ドル=75円32銭を付けたが、過去の円高時に企業が為替変動リスクを抑えるため米国や中国など大消費地に生産拠点を移し、産業構造は変化。近年の貿易収支は輸入超過で赤字になることも珍しくなく、かつての〝輸出立国〟を支えた円安効果は今や小さい。

追い打ちをかけるのがコロナ禍で長期化した入国制限だ。円安は海外からみれば日本での買い物が安くなり、訪日外国人客(インバウンド)の増加につながるが、水際対策の強化が続く現状ではそれも望めない。

円の購買力が低下したのは、実は足元だけの動きではない。円の実力を複数通貨と比べて示す「実質実効為替レート」は、今年9月時点で最も高かった1995年4月の半分弱に落ち込んだ。ニクソン米大統領(当時)が金とドルの交換停止を発表した71年の「ニクソン・ショック」後に円が変動相場制に移行した70年代前半(1ドル=300円前後)と同水準でもある。

だが、持続的な物価の下落傾向が景気を冷やすデフレから脱却できない中、日銀はFRBと異なり超低金利政策の出口が見えない。海外の中央銀行が相次いで金融緩和の「正常化」に踏み切っていることで、日銀は当面、「悪い円安」のリスクにさらされそうだ。

みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは、円安進行を抑止するために、日銀が短期金利をマイナス0・1%に抑える「マイナス金利」の解除(利上げ)などを示唆すべきだと指摘。「それが難しいのであれば正常化のプロセスを検討する意思表示をしてもらいたい」と注文する。(高久清史)